第1回 障害者手帳って何? 持つと、どんなメリットがある?
📖 【全3回】脳梗塞・脳出血の身体障害者手帳ガイド
- 第1回:障害者手帳って何?持つメリット・使える制度(本記事)
- 第2回:脳梗塞・脳出血の後遺症で手帳は取れる?認定基準
- 第3回:身体障害者手帳を申請したい!相談から受け取りまで
脳梗塞・脳出血のあと、「障害者手帳を申請してみては」とすすめられることがあります。でも、すぐに前向きな気持ちになれない方もいるかもしれません。
「まだ自分には必要ないのでは?」「手帳を持つと、何が変わるの?」
障害者手帳は、障害を決めつけるためのものではなく、これからの暮らしを支えるために利用できる制度のひとつです。
今回は、身体障害者手帳って何?という基本から、持つことで利用できる制度やサービスまで、わかりやすくご紹介します。
【1】「身体障害者手帳」とは何ですか?
身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付される、公的な手帳です。脳梗塞や脳出血では、片麻痺などによる手足の機能障害や、失語症などが一定の基準に該当すると、身体障害者手帳の対象になることがあります。
手帳を持つことで、税金の控除、補装具費の支給、交通機関の割引、医療費の助成など、生活を支えるさまざまな制度を利用できる場合があります。
「障害者手帳」はひとつの手帳の名前ではありません。一般に「障害者手帳」と呼ばれているものには、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳があります。
このナレッジでは、脳梗塞・脳出血など脳血管疾患の後遺症がある方に関わる「身体障害者手帳」について、ご紹介します。
【2】脳梗塞・脳出血の後遺症でも、身体障害者手帳を取得できますか?
はい。取得できる場合があります。
身体障害者手帳は、「脳梗塞」「脳出血」という病名に対して交付されるものではありません。脳梗塞や脳出血などによって残った身体の機能障害が、一定の基準に該当するかどうかで判断されます。
たとえば、
- 片麻痺による手足の機能障害
- 歩行などの下肢機能の障害
- 手や腕など上肢機能の障害
- 失語症・構音障害などの言語機能障害
などが対象になる場合があります。
どのくらいの障害が対象になるのかは、次回、第2回「脳梗塞・脳出血の後遺症で障害者手帳は取れる?」で詳しくご紹介します。
【3】障害者手帳を持つと、どんなメリットがありますか?
身体障害者手帳を持つことで、生活を支えるさまざまな制度や割引などを利用できる場合があります。代表的な制度やサービスをみていきましょう。
●税金の控除
身体障害者手帳を持っている方は、所得税や住民税で「障害者控除」を受けられる場合があります。障害者控除とは、税金を計算するときに、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。その分、所得税や住民税の負担が軽くなる場合があります。
所得税では、身体障害者手帳1~6級の方が障害者控除の対象となります。このうち1級・2級の方は「特別障害者」として、より大きな控除が適用されます。
また、本人だけでなく、一定の条件を満たす障害のある配偶者や扶養親族がいる場合にも、障害者控除を受けられることがあります。
●補装具費の支給
身体障害者手帳を持つ方が、障害の状態に応じて装具や車椅子などを必要とする場合、「補装具費支給制度」を利用できることがあります。必要性が認められれば、下肢装具や車椅子などの購入・修理にかかる費用の支給を受けることができます。
★詳しくは、このあとの「【4】下肢装具や車椅子にも利用できる制度がありますか?」で紹介します。
●交通機関・移動の割引
身体障害者手帳を提示することなどにより、鉄道(JR・地下鉄・私鉄)、バス、タクシー、国内線航空券などで、障害者向けの運賃割引を受けられる場合があります。ただし、交通機関によって制度は異なります。
また、お住まいの自治体によっては、一定の等級などを条件に、タクシー料金の支払いに使える福祉タクシー券などが交付される場合があります。
「障害者手帳があれば、電車やバスがすべて半額になる」という制度ではありません。利用する交通機関の割引条件を確認しましょう。
●有料道路の割引
一定の条件を満たす身体障害者手帳を持つ方は、高速道路などの有料道路で障害者割引を利用できます。利用には事前の申請が必要です。
本人が運転する場合と、介護する方が運転する場合では、対象となる条件が異なります。
●医療費の負担を軽くする制度
身体障害者手帳を持つ方は、医療費の自己負担を軽くする制度を利用できる場合があります。国の「自立支援医療(更生医療)」のほか、自治体が独自に行っている医療費助成制度があります。
利用できる条件や助成される範囲は、それぞれの制度によって異なります。
★詳しくは、このあとの「【5】障害者手帳を持つと、医療費は安くなりますか?」で紹介します。
身体障害者手帳を持っているだけで、すべての医療費が無料になるわけではありません。
●施設・民間サービスの割引
身体障害者手帳を提示することで、映画館、美術館、博物館、動物園、テーマパークなどの入館料・利用料が割引または無料になる場合があります。
携帯電話会社などでも、障害者手帳を持つ方を対象とした割引サービスが用意されている場合があります。
割引の内容や、対象となる手帳の等級などは、施設・事業者によって異なります。
●障害者雇用
身体障害者手帳を持つ方は、原則として障害者雇用率制度の対象となり、「障害者雇用」で働くという選択肢があります。障害者雇用の求人に応募するなど、身体の状態や働き方の希望に合わせて仕事を探すことができます。
★詳しくは、このあとの「【6】仕事をするときにも利用できる制度はありますか?」でご紹介します。
■ 利用できる制度や割引は、障害の種類・手帳の等級・所得・年齢などによって異なります。また、お住まいの自治体や利用する事業者によっても条件が異なります。
■ 「身体障害者手帳を持っていれば、すべての制度やサービスを利用できる」というわけではありません。
【4】下肢装具や車椅子にも利用できる制度がありますか?
はい、あります。装具や車椅子など、身体の機能を補うために必要な用具には、「補装具費支給制度」を利用できる場合があります。
対象となる補装具には、
- 装具(上肢・下肢)
- 車椅子
- 電動車椅子
- 歩行器
- 一部の歩行補助杖
などがあります。
脳梗塞・脳出血後の片麻痺では、短下肢装具などの「装具」が身近な例です。必要性が認められれば、購入だけでなく、修理なども支給対象になる場合があります。
費用は原則として1割負担です。ただし、所得に応じた負担上限や支給の条件があります。利用には、市区町村への申請と支給決定が必要です。
補装具費支給制度を利用して補装具を購入・修理するときは、まず病院や市区町村の障害福祉担当窓口へ相談しましょう。原則として、申請し、支給決定を受けてから購入・修理の手続きを進めます。
【5】障害者手帳を持つと、医療費は安くなりますか?
医療費の負担が軽くなる制度を利用できる場合があります。
ただし、身体障害者手帳を持っているだけで、すべての医療費が安くなったり、無料になったりするわけではありません。
主に、次のような制度があります。
●国の「自立支援医療(更生医療)」
18歳以上の身体障害者手帳を持つ方で、手術などの治療によって障害の程度を軽くしたり、取り除いたりする効果が見込まれる場合に、その治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。
自己負担は原則1割で、所得などに応じて1か月あたりの負担上限額が設けられています。
ただし、所得などによって対象外となる場合もあります。利用には申請が必要です。
●自治体の医療費助成制度
自治体によっては、一定の等級や所得などの条件を満たす方を対象に、医療費を助成する制度があります。
制度によっては、障害に直接関係する治療だけでなく、健康保険が適用される一般の診療や薬剤費なども助成の対象になります。
たとえば東京都には、一定の条件を満たす方を対象とした「心身障害者医療費助成制度(通称・マル障)」があります。マル障は東京都独自の制度です。他の道府県や自治体では、制度の名称や対象となる等級、所得制限、助成内容などが異なります。
このように、対象となる手帳の等級、所得制限、自己負担額、助成される範囲などは、自治体によって異なります。
また、手帳を取得すると自動的に医療費助成が始まるわけではなく、別途、申請が必要な場合があります。
■ 「自立支援医療(更生医療)」と、自治体が行う医療費助成は別の制度です。
■ 健康保険が適用されない自費診療や自費リハビリなどは、通常、自治体の医療費助成の対象にはなりません。
■ 利用できる制度や条件については、お住まいの市区町村の窓口で確認しましょう。
【6】仕事をするときにも利用できる制度はありますか?
はい。身体障害者手帳を持っている方は、「障害者雇用」で働くという選択肢があります。一定規模以上の企業には、一定の割合で障害のある方を雇用する「障害者雇用率制度」があります。身体障害者の場合は、原則として身体障害者手帳を持つ方がその対象になります。
障害者雇用の求人に応募するなど、身体の状態や働き方の希望に合わせて仕事を探すことができます。
また、障害のある方が働くときには、障害の状態に応じて、勤務時間や仕事内容、職場環境など、仕事をするうえで必要な配慮について勤務先と相談することができます。これを「合理的配慮」といいます。
たとえば、片麻痺がある方では、
- 通院やリハビリの日程に合わせて、勤務時間や出退勤時刻などを相談する
- 通勤の負担を減らすため、在宅勤務(テレワーク)や時差出勤などを相談する
- 杖や装具、車椅子を使用していても移動しやすい職場環境について相談する
- 片手でパソコンや事務機器を使いやすいよう、机や機器の配置、作業方法を工夫する
- 物を運ぶ、長時間立つなど、身体的な負担が大きい作業について、仕事内容を調整する
などが考えられます。
どのような働き方や配慮が必要かは、障害の状態や仕事内容によって異なります。本人と勤務先で相談しながら決めていきます。
■ 身体障害者手帳を持っていても、一般の求人に応募して働くことはできます。
■ 「手帳を取ったら、障害者雇用でしか働けない」ということではありません。
■ 合理的配慮は、障害者雇用で働く場合だけに限られるものではありません。脳梗塞・脳出血後に、それまで勤めていた職場へ復職する場合にも、必要な配慮について勤務先と相談することができます。
【7】障害者手帳と障害年金は、同じ制度ですか?
いいえ。まったく別の制度です。
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づく福祉制度です。身体の障害について認定を受けることで、さまざまな福祉サービスや支援を利用できる場合があります。
一方、障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、一定の条件を満たすと受け取ることができる公的年金です。生活を経済面から支える制度です。
身体障害者手帳と障害年金は、それぞれ別の基準で審査されます。そのため、「身体障害者手帳が2級だから、障害年金も2級になる」ということではありません。
また、障害年金を申請するために、身体障害者手帳を持っている必要はありません。
まとめ
身体障害者手帳には、日々の生活や移動、仕事などを支えるさまざまな制度があります。
では、脳梗塞・脳出血の後遺症がどのくらい残っていると、身体障害者手帳の対象になるのでしょうか?
▼ 続けて読む(全3回)
- 第1回:障害者手帳って何?持つメリット・使える制度(本記事)
- 第2回:脳梗塞・脳出血の後遺症で手帳は取れる?(片麻痺・認定基準)
- 第3回:身体障害者手帳を申請したい!相談から受け取りまで
【主な参考資料】
・厚生労働省「障害者手帳について」
・厚生労働省「補装具費支給制度の概要」
・厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
・厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
・日本年金機構「障害等級表」
・国税庁「No.1160障害者控除」
※利用できる制度やサービス、対象となる等級、所得要件などは変更される場合があります。最新の情報は、お住まいの自治体や各制度の窓口でご確認ください。
