【リハセンナレッジ】病後の運転再開について知りたい①

脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)が原因による身体障害・高次脳機能障害がある方の「運転再開」や「運転免許の更新」についてよくご質問いただく内容を中心に、『脳梗塞リハビリセンター』のスタッフがご説明します。


(回答者: 脳梗塞リハビリセンター 理学療法士 鶴埜 益巳 及び 言語聴覚士)


 




Q1:脳梗塞発症から1年が経ちました。左上下肢に麻痺が残っていますが、自動車の運転を再開してもよいでしょうか? 


A:  脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)に罹患したことがあり、麻痺などの身体障害、高次脳機能障害等の後遺症が残存している方が自動車の運転を再開したい場合は、まず、主治医に「運転を再開してもよいか」を相談しましょう。合わせて、お住いの都道府県の免許センター(運転免許試験場)内にある「安全運転相談」窓口に電話で問い合わせ、ご自身の身体の状態を正しく説明したうえで、運転再開や免許更新のためのアドバイスを得ます。


免許センターの安全運転相談で、「主治医の診断書の提出」と「免許センターでの適性検査」が求められた場合は、後述の<Q4 自動車の運転を再開するまでの手順>
に沿って、指定の手続きを行ってください。手続きを怠ったり、虚偽の手続きを行ったりすると、罰則もありますので注意しましょう。


 


◆Q2: 身体に障害がある人や高次脳機能障害のある人の「運転免許の更新」の可否は誰が決定するのですか?


A:  運転免許更新の拒否・保留、運転免許の取り消し・停止は、都道府県公安委員会(お住いの都道府県の免許センター)が判断します。主治医やリハビリテーション医、療法士(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、自動車教習所の指導員らが決定するのではありません。


 


◆Q3:脳梗塞を起こしたら、運転はもうできないのでしょうか?


A:  脳血管疾患により脳が損傷すると、車の運転のために必要な「判断」「記憶」「思考」「空間の認識」「社会的なものごとの理解」などを行う脳の高次な機能(高次脳機能)が低下してしまうことがあります。


脳梗塞をはじめとした脳血管疾患に罹患したことのある方は、車の運転により事故などを起こすリスクは健常者よりも高いことをご理解いただいたうえで、まず主治医に「運転を再開してもよいか」を相談しましょう。


安全な運転のためにも、医療機関や『脳梗塞リハビリセンター』などで車の運転のために必要な高次脳機能があるかどうかを検査・評価を受けた後、主治医やご家族の意向も踏まえて、適切なリハビリを受けたほうがよいと思います。


 


◆Q4: 自動車の運転を再開するまでの手順を教えてください。


A:  脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)が原因による身体障害・高次脳機能障害がある方の「運転再開」(免許更新)までの基本的な手順は次のとおりです。


★運転再開の手続き STEP★


1


 


STEP⑥で残念ながら不合格になってしまった場合でも、諦めずに運転再開を目指したい方は「脳梗塞リハビリセンター」にご相談ください。


運転再開の許可が得られたけれども、自動車の機器の操作や一般道路で運転することに不安のある方、運転復帰に向けて本格的な練習を行いたい方は、自動車教習所の“ペーパードライバー向けの運転技能講習”等の受講もおすすめです。


 


◆Q5:脳出血で左片麻痺となり、リハセンの「60日間改善プログラム(身体リハビリ)」にお世話になっています。私は運転できるのでしょうか


 


A:  運転再開に関して「医師の許可」が得られていることを前提として、以下、ご説明します。


まず、「私は運転ができるのかな?」と漠然と考えている方は、今のご自身が、次のチェック項目の全てに「YES」と答えられるかを確認してみましょう。


 




★セルフチェックPOINT★


(どのような手段を利用してもよいので)独りで外出ができ、外出のための計画ができる


病前の、運転歴や事故歴の説明ができる


病前の、自分の運転のクセを説明できる


(病前の運転で)異なる車種を運転する時はどのような注意が必要であるかを説明できる


「運転のためには自己管理能力、危機管理能力、対応力、判断力がとても重要である」。その重要性をしっかりと理解している


自動車運転がどうしても必要な理由があり、トラブルシューティングを十分に吟味できる


運転してもよい、もしくはダメな体調やタイミングをある程度の正確さで判断できる




 


チェックした項目のうち一つでも「NO」がある、他人に説明することに不安を覚えた方は、脳梗塞リハビリセンターにご相談ください。作業療法士・言語聴覚士をはじめとしたリハビリのプロが、あなたのお悩みやご不安を少しでも解消するために、その人その人に合わせた親身のアドバイスを行います。


運転再開をご希望の方は「言語聴覚療法」コースで車の運転のために必要な検査・評価、リハビリが行えますので、ぜひご利用ください。


 


◆Q6: 右麻痺で軽度の注意障害があります。入院中、主治医から運転再開の許可がおりませんでした。生活期のいま、近所への買い物のためにどうしても運転がしたいです


A:  退院後、「日常生活を送るうえで、運転することがどうしても必要だ」「自分が運転しなければならない理由・目的がある(お子様の送迎、など)」とお考えであれば、まず、主治医に運転再開について相談をしてみましょう。リハビリ等を行うことで近い将来に許可が出る見込みがあれば、ぜひ、脳梗塞リハビリセンターにご相談ください。


脳梗塞リハビリセンターでは、主に「言語聴覚療法」コースで、運転再開リハビリのプロである「言語聴覚士」による「運転再開のための評価」や、個々の目標に合わせたオーダーメイドでマンツーマンの「車の運転のために必要な機能の向上を目指すリハビリ」を行っています。


 


◆Q7:運転再開を見送った方がよいケースとは?


A: お住いの都道府県の免許センターで適性検査を受けた結果、運転の許可が得られない場合は運転自体をしてはいけません。さらに、医師(主治医)が医学的な評価に基づき「(今後は)運転してはいけない」と診断した場合は、運転の再開を見送り、代替の移動手段を検討しましょう。


また、医師から運転の許可が下りた場合も、運転再開に関してご家族の同意が得られない場合は代替の移動手段を検討したほうがよいと思います。


★代替の移動手段の例:
・ご家族が自家用車やレンタカーを運転し、目的地まで移動
・タクシー、バス、鉄道など公共交通機関の利用
・運転代行サービスを利用する


 


◆Q8:「失語症」を理由に、家族から運転再開を反対されています。でも運転がしたいのですが…


A: 脳血管疾患が原因で生じる失語症のタイプのうち「ウェルニッケ失語(感覚性失語)」の方は、他者との言語によるコミュニケーションが難しいこともあり、当事者による運転をご家族が反対されているケースが多くみられます。失語症の程度にもよりますが、たとえば道路標識の数字や記号、文字がとっさに理解できないなど識字に障害がある場合は、ご自身での車の運転は控え、代替の移動手段をご家族とともに検討されたほうがよいでしょう。


話し方はたどたどしいものの、聞いて理解する能力が保てている「ブローカ失語(運動性失語)」の方は、半側空間無視、注意障害、遂行機能障害、失行などの「高次脳機能障害」が伴っていなければ、運転自体には支障が無いケースもあります。詳しくは、主治医にご相談ください。


 


◆Q9:左の上肢に麻痺があります。運転の時にあると便利な補助ツールはありますか?


A: 片麻痺の方に、片手でハンドル操作がしやすくなる運転補助装置としては、ハンドル旋回ノブというものがあります。


片手のみでハンドルを長時間操作することは、腕の疲労のみならず、姿勢の崩れ、注意力や集中力の低下をも引き起こします。少ない力でハンドルをスムーズに旋回・停止・保持することが可能になる「ハンドル旋回ノブ」の使用をおすすめします。


各自動車メーカー毎に「福祉車両」や「運転補助装置」についてホームページで記載されていますので検索してみてください。


 


★【関連記事を見る】


病後の運転再開について知りたい② 運転再開のために『脳梗塞リハビリセンター』で出来ること


 




回答者プロフィール


■ 脳梗塞リハビリセンター
事業部 理学療法士
鶴埜 益巳

Tsuruno


職歴:
1997年4月 横浜市総合リハビリテーションセンター 入職(地域サービス室 理学療法士)
1999年4月 足利赤十字病院 入職(リハビリテーション科 理学療法士)
2002年4月 足利短期大学 兼務入職(リハビリテーション看護学 非常勤講師)
2005年4月 高知医療学院 入職(理学療法学科専任講師)
2012年4月 おおさか循環器内科生活習慣病クリニック 入職(理学療法士)
2015年7月 国立がん研究センター中央病院 入職(骨軟部腫瘍・リハビリテーション科 理学療法士)
2018年7月 (株)ワイズ 脳梗塞リハビリセンター入職(事業部 理学療法士)


会員:
社団法人日本理学療法士協会正会員
社団法人東京都理学療法士協会正会員
日本認知神経リハビリテーション学会理事
主な活動実績:
臨床判断学入門、協同医書出版、2006(部分執筆)
認知運動療法研究、2008・2009・2010・2011(全て特集記事)


 


※この記事は、鶴埜先生及び脳梗塞リハビリセンター所属の言語聴覚士による監修の元作成されました。


 




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