脳梗塞の後遺症からの改善を目指す中で、「毎日の自主トレが長続きしない」「リハビリに対して気持ちが乗らない」とお悩みのご本人やご家族は少なくありません。


そうした中で今、注目されているのが「ゲーム」を活用したリハビリです。以前は単なる「遊び」と捉えられがちだったゲームですが、最近では脳への刺激や身体機能の向上、指先や体幹のトレーニング、そして何より「楽しみながら続けられる」という大きなメリットから、リハビリの現場でも積極的に取り入れられています。


この記事では、脳梗塞リハビリセンターの理学療法士が、ゲームを使ったリハビリのメリットや、ご自宅で手軽に取り組めるおすすめの活用法、ご家族で安全に楽しむためのポイントを分かりやすく解説します。


ポイント:
ゲームは単なる娯楽ではなく、脳と身体を同時に刺激する優れたリハビリツールになります。焦らず楽しみながら、毎日の生活に小さな「ワクワク」を取り入れてみましょう。

 


なぜゲームがリハビリに良い?現場で感じられる効果とメリット


リハビリの現場でも、「いかにも運動というメニューは乗り気になれないけれど、ゲームなら夢中になれる」とおっしゃる方は珍しくありません。


ただのトレーニングだと身構えてしまう場面でも、ゲームなら画面やルールに没入しやすく、取り組むハードルがぐっと下がります。そうした「はじめやすさ」をはじめ、ゲームの活用には次のようなメリットが期待できます。


① 「やりたい」を引き出す!心理的ハードルを下げる楽しさ


リハビリで最も大切なことの一つは「継続」ですが、「やらされる運動」になってしまうとどうしても億劫になりがちです。ゲームを取り入れることで「遊び感覚」で取り組めるため、リハビリに対する心理的ハードルがぐっと下がります。


また、ゲームの中で「クリアできた」「点数が伸びた」といった成功体験や達成感を得やすいため、それが次の意欲(やる気)へと自然につながっていきます。


② 注意・記憶・判断力を一度に鍛える「脳への刺激」


ゲームのプレイ中、私たちの脳はフル回転しています。「画面を見る(視覚)」「効果音を聴く(聴覚)」「コントローラーを操作する(体性感覚)」といった複数の感覚情報を脳内で瞬時に統合・処理する練習になります。


さらに、相手の動きを予測したり、次に打つ手を考えたりすることで、注意・判断・記憶・反応速度といった高次脳機能を一度にバランスよく刺激することができます。


③ 運動や動作の反復が自然にできる「身体機能へのアプローチ」


ゲームに夢中になっているうちに、麻痺のある腕や手を動かしたり、体幹を伸ばしてバランスをとったりといった身体運動を、自然な形で繰り返し行うことができます。


「手を〇〇回上げてください」と言われると辛く感じる運動も、ゲームの課題として組み込まれることで、無理なく反復回数を増やせるのが大きな利点です。


④ VR(仮想現実)技術がひらく新しいリハビリの可能性


近年では、ゴーグルや映像を使ったVR(仮想現実)技術を取り入れたリハビリも進化しています。


VRの強みは、転倒などの危険があって現実世界では難しい環境(街中を歩く、障害物を避けるなど)を、安全な室内でリアルに再現できる点です。没入感が高いため注意を引きやすく、より安全かつ効果的な動作練習が可能になります。


 


自宅でできる!脳と身体を刺激するおすすめリハビリゲーム


ゲームと言っても、最新のテレビゲームからスマホのアプリ、カードゲームまで様々です。ご本人の興味や身体の状態に合わせ、無理なく取り組めるものを選んでみましょう。




【Nintendo Switch】数値化で変化が分かりやすいゲーム


テレビの大画面でプレイでき、結果が数字やグラフで目に見えるため、達成感を得やすいのが特徴です。



  • 東北大学加齢医学研究所 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング
    記憶力、注意力、計算力などを手軽に刺激できます。脳年齢などの数値が出るため、日々の変化を実感しやすいです。

  • 世界のアソビ大全51
    将棋、オセロ、トランプ、麻雀などの定番ゲームが多数収録されています。相手の動きを予測し、戦略を練ることで認知機能への良い刺激になります。





【タブレット・スマホアプリ】操作が簡単で手軽に始められるゲーム


画面を指でタッチするだけで操作できるため、ボタン操作が難しい方や高齢の方でも取り組みやすいのが魅力です。



  • パズルゲーム・間違い探し・神経衰弱・数字探しゲーム
    指先でタッチしながら、集中力や視覚的な認識力を鍛えることができます。





【アナログゲーム】道具が少なく家族と一緒に楽しめる定番ゲーム


デジタル機器が苦手な方でも馴染みやすく、カードをめくる、駒をつまむといった手指の運動にも直結します。



  • トランプ・UNO・オセロ・将棋・百人一首・ジェンガ・ブロック遊び
    準備が簡単で、テーブルを囲んでご家族と一緒に取り組めるため、手指と脳のトレーニングに最適です。



 


ご自宅で安全に・楽しくゲームを活用するためのポイント


ご自宅でゲームをリハビリに取り入れる際、効果を高めながら長く続けていくために、理学療法士の視点から大切にしたいポイントをご紹介します。


① 「自主トレ」を意識させない工夫(モチベーション維持)


退院後の自主トレーニングで一番の壁となるのが「モチベーションの維持」です。「リハビリをしなきゃ」と思うと気が重くなりますが、「今日はあのゲームの続きをやろう」と思える環境を作ることで、自然と継続につながっていきます。


② ご家族も一緒に楽しむ(コミュニケーション効果)


ゲームはぜひ、ご家族や介助者の方も一緒に参加してみてください。対戦したり協力したりすることで自然と会話が生まれ、単なる身体機能の練習を超えて、大切なコミュニケーションや社会参加の機会へとつながっていきます。


③ 一番大切なのは勝ち負けではなく「笑顔で楽しむこと」


ゲームのスコアや勝敗にこだわりすぎて、ストレスを感じてしまっては本末転倒です。ゲームそのものが目的ではなく、「ご本人が笑顔で、楽しみながら身体や脳を使うこと」が何よりのリハビリになることを忘れないようにしましょう。


 


まとめ


脳梗塞後のリハビリにおいて、ゲームは「楽しく続けられる自主トレ」の強い味方です。運動や脳トレを「させられる」のではなく、ご本人が主体となって「やってみたい」と思えるきっかけを与えてくれます。


テレビゲームでも、スマホのアプリでも、トランプ一枚でも構いません。ご家族で一緒に笑い合いながら取り組めるゲームを見つけて、無理のない範囲で日常の中に取り入れてみてください。


上記に取り組んでみてご不明な点や、より身体機能に合わせたリハビリのご相談があれば、ぜひ一度、脳梗塞リハビリセンターの体験リハビリにてご相談ください。




【この記事の執筆協力・監修】




郷胡 佑輔(ごうこ ゆうすけ)


脳梗塞リハビリセンター 理学療法士