【リハセンナレッジ】下肢装具の点検とメンテナンス
装具を安全に正しく使用するための点検ポイントと、ご自身・ご家族で行う 日々のメンテナンス方法についてご説明します。装具のタイプによってメンテナンスの方法が大きく変わってきますので、ご自身・ご家族が現在使用している短下肢装具の解説欄をご覧ください。ご使用の下肢装具に関して分からないことがあれば、脳梗塞リハビリセンターの担当スタッフや、装具をおつくりになった時のかかりつけまでお訊ねください。
下肢装具の点検ポイント(全タイプ共通)
●装具は身体に適合していることが大切です。体重の増減や足首の動く範囲が変化すると装具と身体が合わなくなってきます。無理に使用を続けると、足を傷つけたり、歩きにくくなり、転倒の危険性が高まります。
●使用時に不具合が無くても、耐用年数を超えて使用している場合は、義肢装具会社に点検を依頼しましょう。
脳梗塞リハビリセンターの施設リハビリを受ける際は定期的に、「装具が正しく装着できているか」「装具に不具合がないか」等の確認を担当スタッフまでご相談ください。
次に、下肢装具の3つの素材
【 ①プラスチック 】【②金属】 【 ③チタン製「ゲイトソリューションデザイン」 】 について、それぞれの下肢装具の日々の点検ポイント、メンテナンス方法を解説していきます。ご利用者様が現在ご使用中の装具の解説をご覧ください。
① プラスチック AFO(シューホーン、タマラック、オルトップAFOなど)の点検とメンテナンス
◆装着前後の点検 チェックポイント
気になる箇所・症状がある時は、まず、脳梗塞リハビリセンターのスタッフ、装具をおつくりになった時のかかりつけにご相談ください。下肢装具の点検・交換・修理が行える義肢装具会社をご紹介できます。
*CHECK ポイント
ベルトの接着力(付き具合)が弱くなっていないか?
…ゴミがたまっている場合は、先の細い物(ヘアピンなど)で掃除しましょう。
装具を平らなところに置いた時、装具が独立して立つか?
…立たない場合は、装具にゆがみが生じているかもしれません。点検をおすすめします。
かかと部分にゴミがたまっていないか
…ゴミがたまりやすい場合は装具が合っていない可能性があります。点検をおすすめします。
装具の底の底材が剥がれたり、めくれあがったりしていないか
…はがれや擦り減りがあると滑る可能性があります。交換や修理ができるか、義肢装具会社へご相談ください。
◆次の症状がある場合は修理の対応ができないため、装具の「つくりかえ」をおすすめします。そのまま使い続けると割れて壊れてしまうため危険です。
プラスチック素材特有の「白露化(白い色の濁りがある)」や「白い線」がみられる
プラスチックにヒビが入っている
継ぎ手の部分にヒビが入っている
◆ご自宅でのメンテナンス
・汚れに気づいた時は、早めに、乾いた柔らかい布でふき取りましょう。
・ベルト、ストラップ、継手に付いたゴミやホコリは装着前後のタイミングで取り除いておきましょう。
・装具は靴から取り外し、直射日光を避け温度変化の少ないご自宅内の安全な場所に保管しましょう。
・ 装具のお肌に触れる部分は常に清潔にしてください。お肌に触れるクッション部分 (布や革)、ベルト部分の汚れがひどい場合は、ぬるま湯で湿らせた布などを押し当ててふき取ってください。プラスチック部分も同様です。
・装具の合成皮革や布地に落ちにくい汚れが付着してしまった時は、中性洗剤で押し洗いをして、その後風通りの良いところで陰干しをしてよく乾かしてください。柔軟剤、塩素系漂白剤は使用しないでください。
・オルトップのストラップの縫い目がひどくほつれてしまった場合は、ご自身での補修は行わず、義肢装具会社等へ修理を依頼してください。
② 金属支柱AFOの点検とメンテナンス
◆装着前後の点検 チェックポイント
気になる箇所・異常があれば、まず一度、脳梗塞リハビリセンターの担当スタッフ、装具をおつくりになった時のかかりつけにご相談ください。下肢装具の点検・交換・修理が行える義肢装具会社をご紹介することもできます。
*CHECK ポイント
履いて歩いていて「音鳴り」(金属がこすれる音:キュキュ、キーキー 等)がする
…音鳴りの症状があれば 点検をおすすめします。継手の部品が破損している可能性があります。
手で装具を動かしてみて、継手部分がスムーズに動きにくい / 動かしてみて途中でひっかかりがある
…動きが悪い、ひっかかりがある時は、継手の破損や支柱が変形している等の可能性があるため、点検をおすすめします。
ベルトの付きが悪くなってきた
かかとがすり減ってきた
…ベルト、かかとのゴム等は交換・修理ができます。早めにご相談ください。
(劣化状態によっては交換・修理が難しい場合もあります)
◆ご自宅でのメンテナンス
・汚れに気づいた時は、早めに、乾いた柔らかい布でふき取りましょう。
・ベルト、ストラップ、継手に付いたゴミやホコリは装着前後のタイミングで取り除いておきましょう。
・装具はご自宅内の安全な場所にまっすぐ立てた状態で保管しましょう。
・装具のお肌に触れる部分は常に清潔にしてください。支柱部分の汚れがひどい場合は、ぬるま湯で湿らせた布などを押し当ててふき取ってください。靴は乾いた布やブラシなどで汚れを落しクリームを塗り形を整えてください。その他、一般の革靴と同様のお手入れを行ってください。
・落ちにくい汚れがついてしまった場合は、上記のように湿らせた布などで拭き取りましょう。洗剤は装具の上に残ってしまうと皮膚にアレルギーなどを引き起こす可能性があるためおすすめできません。
・靴部分のお手入れ・日々のメンテナンスは一般的な靴の方法と同じです。「撥水スプレー」や「靴クリーム」(皮革の保湿・保護・艶出し)を使用するとよいでしょう。保管する前にしっかりと汚れを落としておくことが大事です。
③ チタン製「ゲイトソリューションデザイン」の点検とメンテナンス
◆装着前後の点検 チェックポイント
油圧式足継手タイプの「ゲイトソリューションデザイン」は療法士・義肢装具士による定期的な点検が必要となる装具です。装具の機能を十分に活かし、安全に使用するためにも、少しでも気になる箇所・異常を感じた時はまず「脳梗塞リハビリセンター」の担当療法士にご相談ください。下肢装具の点検・交換・修理が行える義肢装具会社をご紹介することもできます。
※注意※ 装具の構成部品と各部の名称は、購入時に配付された 取扱説明書「ゲイトソリューションシリーズ製品案内」(パシフィックサプライ株式会社)にてご確認ください。
*CHECK ポイント
油圧ユニットの回転軸・遊動軸が滑らかに動くか
ベルト類に異常がないか
支柱、フレームの金属部分、皮革、布地などに破損が無いか
各部にがたつきが無いか
ネジの異常がないか
変形していないか
ベルト、足底板などの接着部に剥がれが無いか
油圧ユニットにゴミやホコリが付着していないか
異音はしていないか
…手で装具を動かしてみた時や歩行中に異音がする場合は、油圧ユニットの油切れ・油漏れ・破損、ホコリやゴミ・湿気または乾燥等の影響による油圧ダンパー部の性能低下、また、支柱のゆがみ(変形)等の可能性があります。早期の点検をおすすめします。
◆ご自宅でのメンテナンス
・特に、油圧ユニットの調整軸部と回転軸部は、月に一度はホコリや異物の清掃を行ってください。柔らかい布や綿棒を使って拭き取るとよいでしょう。
・水分や湿気、直射日光を避け、日陰で保管します。
・油圧足継手部分は防水仕様ではありませんので直接雨が当たるような場所や浴室内、水中での使用はできません。濡れてしまった場合はできるだけ早く乾いた布などで拭き取ってください。水滴がついたまま放置すると故障やさびの原因になります。ベルト部分の汚れがひどい場合は、ぬるま湯で湿らせた布などを押し当ててふき取ってください。
<制作協力>
■下肢装具画像 提供:KAWAMURAグループ
■参考資料:川村義肢株式会社 「下肢装具」(カタログ/医療関係者向け)、 同 「安心・安全に装具をお使いいただくために」・ 「お使い頂いている『プラスチックの短下肢装具』こんな症状ありませんか?」・ 「お使い頂いている『支柱付き短下肢装具』こんな症状ありませんか?」(パンフレット)、パシフィックサプライ株式会社 「ゲイトソリューションシリーズ製品案内」(取扱説明書)
■解説者 プロフィール:
川村義肢株式会社
関東本部 お客様事業部
新技術開発・普及課
義肢装具士
五十嵐 隆
学歴/職歴:
1994年 愛知工業大学 工学部機械工学科 卒業
2000年 日本聴能福祉学院 義肢装具学科 卒業
2000年4月 川村義肢株式会社 入社
会員:
日本義肢装具士協会正会員
日本義肢装具学会正会員
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