【リハセンナレッジ】脳卒中後、食事をどう変える?

今回の回答者:脳梗塞リハビリセンター運営会社ワイズ所属 管理栄養士 植野氏


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◆Q1:脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)に罹患したことのある人が生活期(維持期)で気を付けるべき「食生活のポイント」はどんなことでしょうか。


脳梗塞・脳出血など脳卒中の再発を予防する観点でも、日常的に食習慣・運動習慣を振り返り、見直しを図ることが重要です。過度な塩分摂取を控えたり、脂っこいものを適度に制限したり、といった一般的に言われていることを守りましょう。また、身体を再構築していくのに十分なタンパク質を摂取し、筋力や持久力の増加を通じてリハビリ効果を高めることが大切です。


 


◆Q2:脳卒中経験者が生活期において「積極的に摂取すべき栄養素、 その栄養素を含む食材」を教えてください。


①不飽和脂肪酸


不飽和脂肪酸には、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用があると言われています。魚介類、ナッツ類、アマニ油・オリーブ油・大豆油などの植物油等は、体内の脂質のバランスを整えてくれるので、日常的な摂取を心がけましょう。


 


②食物繊維


食物繊維には、海藻類・葉物野菜・果物などに多く含まれる「水溶性食物繊維」と根菜類・イモ類・キノコ類・豆類などに多く含まれる「不溶性食物繊維」の2種類があり、両方をバランスよく摂取する必要があります。食物繊維には、余分な脂質や糖質、ナトリウム(塩分)を吸着して体外に排出するはたらきがあります。他にも血糖値の上昇を抑制したり、血中コレステロールを低下させたり、腸内環境を改善する善玉菌を増やすはたらきもありますので、毎食の食事で摂取できることが理想的です。


 


➂カリウム


カリウムにはナトリウム(塩分)の排泄効果があるので、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立ちます。食塩摂取量が多い方は積極的に取り入れたい栄養素です。カリウムは、バナナ・メロン・アボカドなどの果実類、ほうれん草などの野菜類、さつまいもなどの芋類、大豆や小豆などの豆類、魚類、肉類など、幅広い食材に含まれています。カリウムは水溶性のため水に溶けやすく、生食や汁ごと食べられる食材を選ぶと良いでしょう。ただし、腎機能が低下している方はカリウムの摂取制限がある場合があり、注意が必要です。


 


④タンパク質 


タンパク質は血管を構成する重要な栄養素であるため、血管の強度や柔軟性を高める働きを担っています。タンパク質が不足した状態が続くと、血管が弱くなるだけでなく、筋肉量の減少や体力・免疫力の低下を招きます。リハビリも含め、体を動かす習慣のある方は、特に意識して摂取するよう心がけましょう。タンパク質は、1つの食材をたくさん食べるのではなく、肉・魚・卵・大豆・乳製品など、複数の食品からバランスよく摂取するよう心がけましょう。ただし、腎機能が低下している方など、タンパク質摂取の制限がある方は、適切な摂取量を主治医の先生に指示を仰ぐようにしてください。


 


◆Q3:脳卒中経験者が生活期において「(過度な)摂取は控えたほうが良い栄養素・成分、食材」を教えてください。


①塩分(ナトリウム)の過剰摂取を控える


しょうゆや味噌などの調味料は、多くの人が意識的に過剰摂取を控えます。一方、加工食品は意外に見落とされがちです。例えば食パン1枚(6枚切)には約0.8gの食塩が含まれます。塩辛く感じない加工食品にも、食塩を多く含む場合がありますので、成分表示を確認するようにしましょう。


塩分を多く含む加工食品には、漬物や佃煮のほか、かまぼこやハム、ウインナー、たらこや塩辛などがあります。これらの加工食品を常食している場合は、まずは食べる頻度を減らすだけで大幅に減塩できます。


 


②飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の摂取を控える


飽和脂肪酸は、常温で固体の脂(バター、ラード、チーズ、動物性肉脂など)に多く含まれます。飽和脂肪酸は体内で合成可能なため、必要以上に摂取すると動脈硬化を促進する原因となりますが、極端な過剰摂取でなければ、それほど心配する必要はありません。


また、トランス脂肪酸(加工油脂)は、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッドなどを原料としたスナック菓子、ケーキ、インスタント食品などに多く含まれます。肉や魚などの脂と違い、体内でエネルギーとして利用されにくいため、過剰摂取には注意が必要です。


 


➂糖質(炭水化物)の過剰摂取を控える


糖質の過剰摂取により高血糖状態が続くと、全身の血管が傷害されて動脈硬化が促進されます。特に血糖値が上昇しやすい食品としては、清涼飲料水、アイスクリーム、菓子パン、スナック菓子などがあげられます。口当たりの良い麺類(ラーメン・うどんなど)は咀嚼回数が少なく、満腹感が得られにくいため食べ過ぎてしまう傾向が強いようです。


糖質の中でも玄米やパスタ、芋類は血糖値の上昇が白米やパン、麺類と比べて緩やかになる傾向がありますので、普段の食事に積極的に取り入れてみると良いでしょう。


 


◆Q4:脳卒中経験者とその家族が「自炊」をするメリットを教えてください。


食事量と栄養バランスをコントロールしやすいことです。


特に「外食」では、メニューごとの塩分量やカロリーを把握しにくく、思った以上に摂取してしまうことが多くあります。どの食材・栄養素を積極的に摂取すればいいのかを「自炊」を通して把握できておくと、外食でどのメニューを選択したらいいのかがわかるようになります。


また、自炊をリハビリの一つとしてとらえることで、日常生活の中にリハビリの要素を取り入れ、積極的に体を動かすきっかけにすることができます。


 


◆Q5:「中食」利用時の注意点を教えてください。


調理作業のしにくさから中食をご利用になる方もいらっしゃるでしょう。その中でも、あけにくさ・食べにくさがない簡単な食事となると、いつも同じものを選んでしまう、という方もいらっしゃいます。手軽なファストフードは高カロリー・高脂質・高塩分の典型的な食事になる傾向にあるので、ラーメン+チャーハン、寿司+うどん、ハンバーガー+ポテトなどを組み合わせないこと、またはそれぞれの量を減らすことを意識して利用しましょう。組み合わせや量を工夫した上で、週1回程度の利用であれば、食事にメリハリもついて良いでしょう。


 


◆Q6:「外食」時の注意点を教えてください。


麺物・丼物などの単品メニューだけでなく、なるべく多くの食品を摂取できる定食などのメニューを選ぶようにしましょう。そのメニューの栄養成分表示がある場合には、カロリーや塩分量をしっかりチェックしましょう。また、大盛り・特大メニューは避けましょう。食事そのものだけでなく、デザート・加糖飲料・アルコールは盲点となりがちです。食事の全体量を考慮して、適量を摂取するようにしましょう。


もし事前に外食やファストフードを利用することがわかっていれば、前後の食事量を少し抑えたり、軽い運動でエネルギーを消費したりするよう心がけましょう。


 


 


■解説者プロフィール :植野矩行(うえの のりゆき)


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2010年、管理栄養士免許を取得。清智会記念病院(リハビリ病院)勤務、クオール薬局(本社)勤務の後、異業種での営業経験を経て、現在、株式会社ワイズ(脳梗塞リハビリセンター運営会社)地域連携リハビリ相談部に所属。


 


 




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