第46回日本脳卒中学会レポート

第46回日本脳卒中学会におけるポスター発表「生活期にある脳卒中患者に対する鍼灸とリハビリテーションの効果の検証」の内容を掲載しています。

はじめに
『生活期におけるリハビリテーションの現状』

現在の介護保険を利用したリハビリテーション(以下リハビリ)では、頻度や実施時間に制約があり、生活期にある脳卒中患者は十分なリハビリを行えない現状がある。このような背景から、これまで生活期にある脳卒中患者に対して、高頻度の介入をした報告は少なくその効果は定かではなかった。そこで今回、当センターの利用者33名に対し、保険外にて療法士と鍼灸師による施術を提供した結果を客観的指標と主観的指標において調査し、有用性がみられたので以下に報告する。

研究方法

対象者

当センターに来所し、最低週に2回の施術を受けた33名の脳卒中利用者。

性別/年齢 31歳~83歳までの男性17人女性16人。(平均64.3歳)
発症からの期間 1年未満10名、1年以上2年未満12名、2年以上3年未満4名、3年以上5年未満3名、5年以上10年未満3名、10年以上1名。(平均2.7年)
疾患名 脳梗塞20名、脳出血12名、その他1名。
FIM点数 運動項目(13項目)の平均点は71.4/91点。
利用者特性 当センター以外のリハビリ施設を併用した利用者13名。

評価期間

平成29年10月から平成30年1月。

評価方法

下記に示した客観的指標と主観的指標を毎月評価。

結果の処理

χ2検定とT検定により検証。

評価内容

客観的指標

  • SIAS-M(Stroke Impaiment Assessment Set)
    →麻痺側運動機能評価項目群を評価
  • TUG(Timed Up&Go test)
    →通常歩行速度を評価
  • FIM(Functional Independence Measure)
    →運動項目を評価

主観的指標

  • 満足度調査
    →満足度や改善を実感したかなどを調査
  • SAMR(Scale for Achievement Motive in Rehabilitation)
    →達成動機の強さを評価

結果

30日後と60日後における身体改善者と改善実感者の変化

60日経過した方が改善を実感しやすい

発症からの期間別にみた各項目の人数

各要因別におけるリハビリを継続した人数

リハビリ施設を併用し達成動機が高い方が、リハビリを継続して行う

生活期におけるリハビリの有用性

生活期にある脳卒中患者に対して高頻度の介入をすると、発症からの期間に関わらず身体機能の改善や高い満足感が得られた。一方、身体機能が改善してもすぐには実感できない利用者が一定数いるが、60日間継続してリハビリを行うと改善を実感できるようになる傾向があった。また、発症から1年以上経過しても他のリハビリ施設を併用してリハビリを続けるなど、達成動機が高い利用者ほど継続して当センターを利用していた。これらの結果から、十分なリハビリを行えない生活期にある脳卒中患者に対し、保険外でのリハビリを提供する有用性が示唆された。

結語

生活期にある脳卒中患者が当センターに通うことで、客観的指標と主観的指標のいずれにおいても効果がみられた。十分なリハビリを行えない現状の中、保険外のリハビリを利用することで高頻度の介入が可能となり、生活期であってもさらなる身体機能の改善と高い満足感が得られることが分かった。今後も研究を継続し、効果の検証を進めていきたい。

※筆頭演者は日本脳卒中学会へ過去3年間のCOI自己申告を完了しています。本演題の発表に際して開示すべきCOIはありません。

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