冬こそリハビリを止めないで ― 脳の可塑性を信じる

この記事でわかること
- 冬にリハビリを休みがちになる理由
- 動かない期間が続くことで起こりやすい変化
- 「続けること」が回復につながる理由
- 冬でも無理なく動きを保つための工夫
- 一人で頑張らずに継続するための考え方
冬になると、体が重く感じたり、動きづらさが強まったりしませんか。
寒さによる血流の低下や筋肉のこわばり、自律神経の乱れは、脳卒中後の後遺症をお持ちの方にとって特に大きな負担になります。
「今日は寒いから少し休もう」と思う日が続くと、気づかないうちにリハビリの成果が後退してしまうこともあります。
本記事では、「なぜ冬にリハビリを止めてはいけないのか」を、神経可塑性(しんけいかそせい)の観点から解説します。
神経可塑性とは、脳が新しい経路をつくり、動きを再び学習していく力のことです。
冬にサボると起こる“機能低下のスパイラル”
寒さが強まると、体温を守るために筋肉が自然と緊張します。
これにより可動域(関節が動く範囲)が狭まり、動くたびに「重い」「疲れる」と感じやすくなります。
また、気温の低下とともに外出意欲も下がりやすく、「動かない日」が増える季節でもあります。そうすると筋力が低下し、日常動作が辛くなり、そうして一時的な休みが続くと、再開時には以前よりも動きづらく感じる——そんな悪循環に陥りがちです。
リハビリを中断したときに起こる3つの後退
- 筋力・体力の低下
動かない時間が続くと、筋肉はすぐに衰えます。
研究では、非活動期間が続くと筋力が一定程度低下することが報告されており、状況によっては、2週間で10〜15%程度の低下がみられた例もあります。 - 可動域の減少
筋肉や関節が硬くなり、元の動作範囲を維持しにくくなります。
拘縮(こうしゅく:関節が固まってしまう状態)のリスクも高まります。 - 神経可塑性の停滞
脳は「よく使う動き」を優先して記憶します。
つまり、動かさない期間が続くと、脳がその動作を忘れてしまうのです。
こうしたことから、冬の1-2か月の差は、春に大きな違いとなって現れるのです。
神経可塑性――回復を支える脳の力
脳卒中後のリハビリでは、この神経可塑性が最も重要なカギを握ります。
同じ動きを繰り返し練習することで、脳内の神経ネットワークが再構築され、
失われた機能が別の経路で再び使えるようになることが知られています。
ただし、これは“継続”が条件です。 刺激が途切れれば、再構築も止まります。
「動き続けること」そのものが、脳を鍛える唯一の方法なのです。
冬にリハビリを続ける意味
冬は「維持の季節」ではなく、「定着の季節」と考えてください。寒さで外出が難しい日でも、小さな動きを絶やさないことが大切です。
たとえば、
- 朝起きたときに腕をゆっくり回す
- テレビを見ながら背中を丸たり反らしたりする
- 深呼吸しながら肩をすくめて下ろす
こうしたわずかな動きでも、脳への刺激になります。
“動かない日をゼロにする”ことが、後退を防ぐ最良の方法です。
継続を支える3つの工夫
- 環境を整える
暖房で部屋を温め、動きやすい服装にする。小さなことでも体の反応は変わります。 - 習慣化する
1日の中で“動く時間”を決め、同じ音楽や場所で行うことでルーティン化しやすくなります。 - 支援を受ける
家族や専門職に声をかけてもらう、またはリハビリ施設のサポートを利用する。
「一人で頑張らない」ことが、継続のコツです。
鍼灸×リハビリで「動ける体」を保つ
第2回で紹介したように、鍼灸は筋緊張を緩め、血流を促進する効果があり、
リハビリを“行いやすくする準備”として最適です。
- 鍼灸で整える → リハビリで動かす
この順序が最も効率的で、寒い季節でも「動ける体」を維持しやすくなります。
今、動き続けることが未来を変える
「冬だから仕方ない」と思った日から、回復のスピードはゆるやかに下がります。
一方で、「今日も少しだけ動こう」と決めた日から、脳はまた回復を始めます。
リハビリの継続は、努力ではなく習慣です。
そしてその習慣が、春に軽やかに動ける自分をつくります。
冬の今こそ、動きを止めない選択を。
たとえ1日10分でも、リハビリを続けることが未来を変えます。
動きづらさや後退を感じている方は、専門家による個別相談や体験リハビリを利用し、
「今の自分に合った続け方」を一緒に見つけましょう。
よくあるご質問(冬のリハビリ継続について)
Q1:冬はリハビリを休んだほうがよいのでしょうか?
A1:体調を見ながらですが、完全に動かない日が続くと、動きづらさが強まることがあります。
Q2:少し休んだだけでも、影響はありますか?
A2:短期間でも動かない状態が続くと、再開時に「重い」「やりにくい」と感じることがあります。
Q3:冬でもできる簡単な動きには、どんなものがありますか?
A3:腕を回す、肩をすくめる、姿勢を変えるなど、短時間の動きでも刺激になります。
Q4:続ける自信がない場合は、どうすればよいですか?
A4:家族や専門家のサポートを受けながら、「一人で頑張らない」形をつくることが大切です。
おわりに
このシリーズは、
- 冬に起こる体の変化を知ること
- 体を整えること
- 動きを続けること
の3つを軸にお届けしました。
もし第1回をまだ読んでいない方は、冬に後遺症がつらくなりやすい理由から、ぜひご覧ください。
知ること・整えること・続けること。その3つが揃えば、寒い季節も、チャンスに変わります。
この第3回をもってシリーズは完結しますが、
寒さを理由に改善への道を止めるのではなく、「今こそ動く」を合言葉にしていきましょう。
▶この冬、一緒に歩み続けられる場所があります
「リハビリしたい気持ちはあるけれど、思うように体が動かない」「自分だけで頑張るのは、正直しんどい」そんなお気持ちにも寄り添いながら、冬を一緒に乗り切ってまいります。外出が大変な場合は、ご自宅やサ高住・老人ホーム等への訪問リハビリも対応可能です。
まずは気軽にお声がけください。
体験やご相談はこちらから。
この記事は、脳卒中後遺症のリハビリ専門家である
理学療法士(PT)福田 俊樹(脳梗塞リハビリセンター R&Dセンター長 /回復期病院で中枢神経疾患を専門に10年勤務、脳梗塞リハビリセンターに2016年入職後、生活期リハビリの実績を重ね、研修センター長を経て現在はR&Dセンター長として勤務)が監修しています。
本記事は一般的な情報提供であり、症状や状態には個人差があります。
