冬はなぜ脳卒中後遺症がつらくなる?―悪化しやすい理由と対策
この記事でわかること
- 冬に脳卒中後遺症がつらく感じやすくなる理由
- 寒い季節に起こりやすい体の変化と注意点
- 「無理させたくない」と感じるご家族が知っておきたい考え方
- 冬でも無理なく続けられる、自宅でのセルフケアのヒント
- 冬の過ごし方が、その後の動きやすさにつながる理由
冬になると「動きづらい」「手足が冷たい」「疲れやすい」と感じる方が多いのではないでしょうか。
これは、誰にでも起こる生理的な変化ですが、脳卒中後の後遺症をお持ちの方にとっては特に大きな影響を与えます。
この記事では、寒さが体に与える影響を一般的な生理学の観点と、後遺症特有の視点から整理します。
寒さによって起こる身体の変化
寒さを感じると、人の体は体温を保とうとします。
末梢の血管が収縮し、血流を体の中心部へ集めるため、血のめぐりが減る手足は冷たくなります。血流が悪くなると筋肉が硬くなり、動きがぎこちなくなったり、痛みを感じやすくなったりします。
さらに冬は交感神経が優位になりやすく、血圧が上がり、筋肉の緊張が高まりやすくなります。
これが「寒くなると肩がすくむ」「動きが重い」といった感覚の正体です。
脳卒中後遺症のある方に起こりやすい変化
脳梗塞や脳出血の後遺症をお持ちの方は、もともと血流や筋肉のバランスが崩れやすい状態です。そこに冬の冷えが加わると、以下のような現象がさらに起こりやすくなる可能性があります。
- 麻痺側の筋緊張(こわばり)がさらに強くなる
- 痙縮(けいしゅく):筋肉が無意識に固くなり、動かしにくくなる
- 可動域(関節の動く範囲)が狭まる
- 手足の冷えにより動きがぎこちなくなる、細かい動作がしにくくなる
- 疼痛やしびれが強まる
- 疲労感・気力の低下
- 動きづらさから転倒リスクが増加
冬は身体全体が「縮こまりやすい季節」であることを、体感されている方も多いのではないでしょうか。
「冬は後退しやすい季節」という事実
寒い日が続くと、外出や運動の機会が減ります。
「動かない → 筋力が落ちる → さらに動きづらくなる」という負のスパイラルが生まれます。
特に、脳卒中後のリハビリでは“刺激を続けること”が重要です。
動かさない期間が長くなると、せっかく改善がみられていた動作が再び難しくなることもあります。
「無理させたくない」ご家族へ
後遺症をお持ちのご本人だけでなく、ご家族も悩む季節です。
「寒い中、通わせるのはかわいそう」
「無理に行かせて体調を崩したらどうしよう」
そう感じるのは自然なこと。でも、“無理をさせないこと”と“何もしないこと”は違います。動かさない期間が長いほど
- 筋力低下
- 痙縮悪化
- 歩行能力低下
が進んでしまいます。
できる範囲で“動く機会”を支えることが大切です。
自宅でできる冬のセルフケア
まずは「冬の不調は自分のせいではない」と知ることが大切です。
身体の自然な反応を理解し、無理のない範囲で温めたり、軽い運動を取り入れたりしていきましょう。
【オススメ】今日からできる冬のセルフケア
- 朝のあたため習慣: ホットタオルで首や手足を温め、軽くストレッチを。
- 入浴時間を味方に: 湯船で身体を温めながら、腕や足を優しくさすったり、動かしたりすると血流がよくなります。
- 1日3回の小さな運動: 「トイレ前につま先立ち10回」「椅子からの立ち座り5回」など短くていいので、何かをするついでに習慣として取り入れましょう。
冬のつらさの理由がわかると、「では、どう整えればいいのだろう?」という疑問が浮かぶ方も多いと思います。
次回【第2回】では、寒さで滞りやすい体の“めぐり”を整える方法として、鍼灸が冬の後遺症ケアにどのように役立つのかをご紹介します。
よくあるご質問(冬の過ごし方について)
Q1:冬になると、動きづらさが強くなるのは自然なことですか?
A1:はい。寒さによる体の反応で、手足の冷えやこわばりが出やすくなることがあります。
Q2:「無理させたくない」と思って、あまり動かさない方がよいのでしょうか?
A2:気遣いはとても大切ですが、動かさない時間が長くなると、さらに動きづらくなることもあります。できる範囲での動きを意識することが大切です。
Q3:自宅でできる、冬に取り入れやすい工夫はありますか?
A3:体を温めることや、短時間の軽い動きを生活の中に取り入れることがおすすめです。
Q4:外出が難しい場合でも、相談できる方法はありますか?
A4:はい。ご自宅や入居先の施設への訪問サポートなど、状況に合わせた方法を選ぶことができます。
冬でも改善を感じられるサポートがあります
冬こそ一人で頑張らずにご相談ください。冬の1-2か月の過ごし方が、春の動きやすさに大きく影響します。
すでに冬ならではの不調を感じ始めている方も、その前に身体を動かしてみようと決意された方も、迷いがある方も。まずは体験してみてください。ご家族からのご相談も歓迎しております。
また、外出が大変な場合には、ご自宅や入居先の施設(サービス付高齢者住宅、老人ホーム等)への訪問リハビリのご相談も可能です。まずは気軽にお声がけください。
この記事は、脳卒中後遺症のリハビリ専門家である理学療法士(PT)福田 俊樹(脳梗塞リハビリセンター R&Dセンター長 /回復期病院で中枢神経疾患を専門に10年勤務、脳梗塞リハビリセンターに2016年入職後、生活期リハビリの実績を重ね、研修センター長を経て現在はR&Dセンター長として勤務)が監修しています。
本記事は一般的な情報提供であり、症状や状態には個人差があります。
