河合美智子さんと語る 脳卒中後のリハビリと人生 リハセンツアーin大阪 イベントレポート

俳優の河合美智子さんは2016年に脳出血を経験し、その後ご自身の後遺症やリハビリと向き合いながらご経験を発信し続けています。
「昨日までできていたことが、急にできなくなる。」
脳卒中を経験した多くの人が、そんな現実に直面します。
身体の変化だけでなく、仕事や生活、将来への不安など、さまざまな思いを抱えることになります。
そんな当事者やご家族が集まり、経験を語り合う交流イベント
「河合美智子さんと行く!リハセンツアー in 大阪」 が開催されました。
俳優の河合美智子さん、ご主人の峯村純一さん、そして脳梗塞リハビリセンターの理学療法士・郷胡も参加。
午前と午後の二部にわたり、発症後の気持ちやリハビリとの向き合い方、家族としての寄り添い方などについて、率直な対話が生まれました。
右半身が動かなくなった日から
イベントの冒頭では、河合美智子さんがご自身の経験を語りました。
河合さんが脳出血を発症したのは2016年。
発症直後は、右半身がぴくりとも動かなかったといいます。
「今から思えば“現実逃避”だったのかもしれません。でもその時、“次の役は麻痺患者だ!”と思い込んだんです」
俳優として長く活動してきた河合さんらしい受け止め方でした。
「今回はそういう役なんだ、そういう設定なんだと思うことで、少し受け入れられたのかもしれません」
現在はYouTubeなどでも発信されていますが、今では小走りをしたり、ピアノを弾いたり、最近では雪かきまでできるようになっているそうです。
発症直後の状態を知る方にとっては、驚くような回復です。
家族としてどう支えるか
続いて、ご主人の峯村純一さんが自己紹介をされました。
「58歳です。映像編集やマネージャー、役者などいろいろ経験してきました。河合のサポートにも、その経験が役立ったと思います」
参加者からは
「LIVE配信でも峯村さんはいつもニコニコされていますね」
という声もありました。
それに対して峯村さんは、少し照れながらこう話します。
「どうしたらいいか全くわからない状況だったので、もう笑っておくか、という心理状態だったのかもしれません」
すると河合さんが
「それがとても助かりました」
と笑顔で返し、会場には温かな空気が広がりました。
家族としてどう寄り添うのか。
正解がないからこそ、多くの参加者が深く頷いていました。
薬との付き合い方
会の中では、お薬についての悩みも共有されました。
ある参加者は、降圧剤を飲むと強いめまいが出てしまい、1日寝たきりに近い状態になることもあるため、飲むこと自体がつらいと話します。
一方でご家族は、自己判断でやめるのではなく主治医に相談してほしいという思いを抱えていました。
それに対して河合さんは、
「薬が合わないと本当に辛いですよね。でも降圧剤にもいろいろ種類があります。合う薬が見つかるまで、医師と相談しながら探してほしいです」
と話しました。
また別の参加者からも
「再発してしまうと、二度目はもっと重い後遺症が残ったり命に関わることもあります。命に代えられるものはないのだから、絶対に自己判断でやめたりしないで、医師に相談してほしい、家族としてお願いします。」
という声が寄せられました。
当事者と家族、それぞれの立場からの思いが共有された時間でした。
発症から1年の参加者の声
ガソリンスタンドで手が動きにくくなり、
車を置いて親戚に病院へ連れて行ってもらったという方もいました。
発症は1年ほど前。
すぐに病院へ行ったことで、
血栓を溶かす治療(発症から4.5時間以内のみ可能)を受けることができたそうです。
現在は
・軽度の麻痺
・高次脳機能障害
・失語症
といった後遺症があります。
数字やアルファベットが話しづらく、
「怒りや悲しみの感情がどこかへ行ってしまった」とも語られました。
それでも
「この病気になったのは災害と同じだと思っています。
この経験を通して、社会に必要なことを整えたり還元したりする役割なのかもしれない」
と穏やかでありながら、とても力強い言葉を話してくださいました。
「落ち込むのは当然」
午前の回では、参加者から率直な質問が寄せられました。
「どうしたら前向きになれるのか、今日はそんな話を聞きたいです」
発症からまだ1年に満たないという参加者の言葉に、河合さんはこう答えました。
「昨日までできていたことができなくなるんだから、落ち込むのは当然ですよね」
前向きになることを急ぐのではなく、まずは落ち込む気持ちを認めること。
その言葉に、多くの参加者が深く頷いていました。
受容には時間がかかる
途中、脳出血を経験された方から
「私には何もない!」
という嘆きの声も上がりました。
それに対して美智子さんは
「発症時期も、受容にかかる時間も、後遺症も、人それぞれ違います」
と優しく語りかけます。
「今日話を聞いていても、受け入れて前に進むまで2年くらいかかったという方が多いですよね」
そして自身の経験を振り返ります。
「私は発症から5年くらいたって、脳梗塞リハビリセンターで小走りを目標にしたんです。絶対無理だと思っていたのに、できるようになりました」
峯村さんも続けます。
「障害の受容には
ショック → 否認 → 混乱 → 解決への努力 → 受容
というプロセスがあると言われています」
気持ちが前向きになるきっかけ
参加者の皆さんで
「病後の気持ちの変化」について語り合いました。
「若いし運動もしていたので、状況を受け入れられなかった。
終わらせたいと思うこともあり、ずっと泣いていました」
という方も。
しかし時間がたつと
「左手を開く動画を探して」
と本人からリクエストが来るようになったそうです。
きっかけとして挙がったのは
・外出すること
・できなかったことができるようになること
でした。
美智子さんも
「好きなことができると自信になりますよね」
と話します。
小さな積み重ね
峯村さんは、YouTubeライブでの視聴者コメントを紹介しました。
「ある日カレーを食べて汗をかき、辛さを感じた時、切れていた感覚がつながった気がした」
この話を受け、ある参加者がこう話します。
「絶対動くと信じて念じていました。
少しでも動くなら回路はつながっていると信じていました」
目標は「笑顔」
最後に、
「お二人ともニコニコしていていいなあ」
と話す参加者に対し、美智子さんは
「じゃあ3月の目標は、
**“夫婦で口角を上げること”**にしてみてください」
と提案しました。
人生を少し違う角度から見る
午前の回の終わりには、印象的な言葉も紹介されました。
峯村さんが、YouTubeに寄せられたコメントを紹介します。
「健康だった時間が56年、病気をしてからが8年だとすると、本体は56歳、生まれ変わりは8歳。平均すると32歳」
この言葉に、会場には笑みがこぼれました。
午後の部:それぞれの発症後と回復
午後の回では、参加者それぞれの経験がより詳しく語られました。
ある方は、仕事のストレスが高い時期に右脳被殻出血を発症しました。
「左手がピリピリして、足がよろよろして、それで倒れました」
急性期病院に2週間入院し、その後回復期病院へ。
リハビリでは、以前指導していたバレーボールチームに戻ることを目標にしていたそうです。
また、中部地方から東京の脳梗塞リハビリセンターまで通い、短期集中リハビリを受けた経験も共有してくださいました。午前・午後それぞれ2時間、理学療法士や作業療法士から身体の動かし方や生活上の注意点を学んだと話されました。
見えにくい後遺症
別の参加者は、右椎骨動脈乖離によるくも膜下出血を経験しました。
麻痺はなく杖なしで歩くことができる一方、視力や集中力の低下など高次脳機能障害を感じていると話します。
「見た目には普通に見えるので、つらさが伝わりにくいんです」
午後になると注意力が落ち、めまいやふらつきが出ることもあるそうです。
家族が残した記録
ご家族として参加された方からは、発症当時の記録についてのお話もありました。
「夫は“体調が悪いから寝るわ”と言ったあと、うがいをしながら倒れました」
救急搬送後、水頭症を発症。本人は、病院に運ばれてから、2か月間の記憶がないそうです。その間の様子や、家族との会話などは、ご家族が手帳に詳細に記しておられました。
「日記や写真、動画を残しておくと、とても大事な記録になります」
という言葉に、他の参加者も頷いていました。
今、意識していること
参加者の一人はこう話しました。
「“笑う”だと頑張りすぎてしまうので、“にやける”くらいがちょうどいいと思っています」
バレーボールの教え子たちから届いた
「復帰を待っています」
という動画を見たときには、
「感情失禁もあって、ぼろぼろ泣きました」
と振り返ります。
「病気をしたことで気づいた幸せもあります。
むしろ出会いは増えたかもしれません」
理学療法士からのアドバイス
郷胡PTからも、日常でできるリハビリのアドバイスがありました。
「目の筋肉もリハビリできます。
上下左右に動かすトレーニングをしたり、アイマスクで温めて休ませることを繰り返すことで、ふらつきの軽減につながることもあります」
「お昼休みに少しやる、くらいの気軽さで大丈夫です」
当事者と家族が語り合える場を
脳梗塞リハビリセンターでは、当事者やご家族が安心して経験を共有できる交流イベントを各地で開催しています。
リハビリのこと、生活のこと、気持ちのこと。
日々の中ではなかなか言葉にしづらいことも、同じ経験を持つ人たちとなら話すことができます。
ぜひお気軽にご参加ください。
次回イベントは4月に名古屋で開催します。
【名古屋】申込み
■以前のイベントレポート(東京で実施の第1回)
河合美智子さんと行く!リハセンツアー
https://noureha.com/news/eventkawaisan1/
