【イベントレポート】河合美智子さんYouTubeライブ スピンオフ企画in名古屋
河合美智子さん・峯村純一さんによるYouTubeライブ presented by 脳梗塞リハビリセンターのスピンオフ企画。今回は、名古屋センターで、午前・午後の2回にわたり行われた交流会の様子をお届けします。名古屋近郊にとどまらず、三重、茨城と遠方からご参加の皆さんとそれぞれの経験や想いを語り合う場となりました。

「リハビリ伝道師になりたい」河合さんの決意
冒頭、河合さんはこんな言葉で話し始めました。
「脳卒中は大きな病気だけど、諦めずに一日でも早くリハビリに取り組んでほしい。その大切さを伝える『リハビリ伝道師』になりたいんです」
峯村さんも「2016年に彼女が発症したあの日から、サポートする人生に一日で変わりました。今日は何でも話してください」と続け、会場は一気に温かな空気に包まれました。
【午前の部】「今の自分」をどう受け止めるか
午前の部では、発症して間もない方から長年リハビリを続けている方まで、さまざまな経験が共有されました。
「他人とも、昔の自分とも比べない」
被殻出血から10年以上が経つAさんは、ボディビル経験者。これまで脳卒中以外にも数々の手術を乗り越えてきました。「直近の手術の影響で腕が動かしづらくなったけど、ダンベルが持てるからいいか!と思ってます」と話すAさんに、河合さんも「動かないことに目を向けすぎると疲れちゃいますもんね。わたしも今は93歳のご近所さんたちと『女子会』をしたりして、病気前より楽しいことが増えたかも」と応じます 。
「美味しいものが食べたい!」その執念が道を拓く
くも膜下出血と脳梗塞を経験したBさんは、一時は要介護4で寝たきり、胃ろうの状態にありました 。「後遺症だから無理だと言われても諦めず、自分で情報を探してリハビリを続けてきました」と語ります。現在は食事や会話も楽しめるようになり、「やらされるリハビリと、自らやるリハビリは全く違う」という言葉に、全員が深く頷きました。
Q:いつ頃から「普通の生活」を感じられましたか?
参加者からの問いに対し、河合さんは自身の経験を振り返りながら答えました。
「当事者の方と情報交換した際、『発症して2年で結構変わるよ!』と言われ、確かに2年後に安定しましたね。その後、発症5年後に脳梗塞リハビリセンターでリハビリを始めた際、もう改善は難しいかな?と内心思いましたが、リハビリの中で『サボっている神経がある』ことに気づかされました。
そこを集中して訓練したら、ピアノを小指で弾けるようになったり、小走りができるようになったり。もしかしたら一般的に言われている『半年以降の改善は難しい』という言葉に引っ張られて、自ら難しくしてしまっているのかも。脳を良い方向にうまく乗せて楽しむことが、よくなるコツかもしれませんね」
【午後の部】視点を変えれば、世界は「サカサマ」に面白くなる
午後の部は、SNSやYouTubeで発信活動を行う方々も集まり、よりアクティブな情報交換の場となりました。

世間のイメージと、私たちのリアル
世間一般では、脳卒中のリハビリというと「厳しい訓練を涙ながらに乗り越えて……」というドラマチックな描かれ方をしがちです。しかし、当事者の皆さんの本音は少し違います。
Cさんが「闘病の苦しみを乗り越えて、といったイメージを持たれがちだけど、いやいや、実際は楽しいですよ!」と笑うと、河合さんも大きく共感。
「取材とかだと『闘病生活を支えてくれたから結婚した』みたいに美談にされがちなんですけど、いやいや、元々結婚決めてたし!って(笑)。リハビリだって、大変なこともあるけれど、新しい発見があって面白いんですよね」 そんな河合さんの言葉に、会場は大きな笑いに包まれました。
「病気は、発信のチャンスだと思った」
YouTubeでの発信や、片麻痺当事者の散歩会を主催するDさんは、「病気になった自分を『無個性』からの脱却と捉え、記録を配信し始めました」と語ります。
同じくYouTubeに勇気づけられたというEさんも、「次は自分が誰かの力になりたい」と、前向きな連鎖が生まれていました。
「生きてるだけで丸儲け」の精神で
「なんで俺が……」と自暴自棄になっていた時期があったというFさん。河合さんの動画を見て「俺もこうなりたい」と一念発起し、今では復職を果たしました。「最近てんかんで運転ができなくなったけど、事故にならなくて良かった。プラス思考でいきたい」と語る姿に、会場から拍手が送られました。
リハビリの「当たり」を引き寄せるコツ
会場では、具体的なリハビリのヒントも飛び出しました。 「入院中に勧められた、車椅子を手ではなく足で漕ぐ練習が役に立っているかも」というエピソードに、専門家である郷胡(ごうこ)PTが「筋力向上だけでなく、足首の可動域を広げるのにも役立ちます」と解説。参加者からは「そういう意味があったんだ!」と納得の声が上がりました。 また、装具に代わるサポーターや、おすすめの滑りにくい靴、ホールド感のあるスニーカー選びなど、当事者ならではの「超実践的」な情報共有が止まりませんでした。
最後に:心が豊かになる「これからの人生」
河合さんは、移住先の豊岡での暮らしに触れながら、最後をこう締めくくりました。
「病気をした後のほうが、心が豊かになったなと実感しています。歩道も実は小さな坂道だらけだったり、バリアフリーといえどエレベーターが遠かったり。階段の手すりが下三段だけ設置されていなかったり、街並みの”ツッコミどころ”に気づけたのも発症したからこそ、ですよね(笑)。
以前より歩くのがゆっくりになって、渡りきれずに信号待ちをすることもありますが、そんな時間も今は大切に思えるんです。かつてのせっかちだった私ならイライラしていたはずの待ち時間も、ふと足を止めて『あぁ、桜が綺麗だな』と気づける余裕をくれました。日常の不便さを『どう面白がるか』。視点を変えて、笑いに変えて、一緒に歩んでいきましょう」
「三重から電車に乗るのが怖かったけれど、勇気を出して来て本当によかった」
という声に代表されるように、参加者の皆さんの顔には、来た時よりもずっと明るい光が灯っていました。一人で抱え込みがちな病気ですが、周りを見渡せば意外と仲間がいる。顔を合わせることで「パワーの交換」が行われた、最高の交流会となりました。
【編集後記】
交流会を通じて、多くの参加者の皆さんが共通して抱いていた想いがありました 。それは、リハビリの期限や周囲の言葉によって「これ以上は難しいのではないか」というレッテルを貼られてしまうことへの違和感です 。
リハビリの期間や回復の目安について語られることは多いですが、実際にはそこから自ら調べ、工夫を重ね、歩行や食事、趣味を再び手に入れた方々が目の前にいらっしゃいました。河合さんも「『半年過ぎたら治らない』と言われてしまうのは、当事者あるある。でも、脳の眠っている力をうまく引き出してあげれば、良くなる余地はいくらでもあるはず」と、力強く語ってくださいました。
「できない理由を探すより、どうやったらできるかを考える人になりたい」
そんな皆さんの前向きな挑戦を、私たちはこれからも全力でサポートしていきます。
一言アドバイス(郷胡PTより)
「イベントで話題になった『足漕ぎ車椅子』の動きは、車輪付きの椅子で座りながらでも再現できます。足首を意識して引き上げる動作を、日常の隙間時間に取り入れてみてくださいね」

■以前のイベントレポート
河合美智子さんと語る 脳卒中後のリハビリと人生 リハセンツアーin大阪
https://noureha.com/news/kawai-rehab-tour-osaka/
