【リハセンナレッジ】脳卒中後遺症の改善に効くツボ 7選

今回の回答者:脳梗塞リハビリセンター大宮 鍼灸師 森田氏


監修協力:脳梗塞リハビリセンター 教育担当 鍼灸師 石上氏 / 鍼灸部門統括 鍼灸師 宮澤氏)




脳梗塞リハビリセンターの鍼灸治療では、ご利用者様の症状や体質、心身の状態に合わせて全身の700カ所以上あるツボを局所(症状のある部分)や遠位から選択的に組み合わせ、「緊張を抑える」「足の血流を改善する」など求める効用を最大限に狙った施術を行っています。


今回は、脳卒中後遺症の改善に効果的なツボを7つご紹介します。脳梗塞リハビリセンターの「鍼灸」施術時にも症状改善のために使用する機会が多く、また、いずれもホームケアでご自身・ご家族が施術しやすいツボですので、それぞれのツボの位置の探し方や効用を覚えておくとよいでしょう。


ご自身の身体のツボの場所やケアの方法が分からない時は、専門知識を持った鍼灸師にご質問されることをおすすめいたします。




◆1:天柱(てんちゅう)と 風池(ふうち)


●効用:血流促進、脳卒中の再発防止に


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「天柱」と「風池」のツボは、首・肩・背中の筋肉の始点となる場所に位置しています。ここが凝ってしまうと血管を細める作用のある交感神経が強くなってしまいます。


血管が細くなるということは、脳や内臓への血流が悪くなり、栄養や酸素が届きづらいため働きが悪くなり、脳血管疾患の再発や、癌などの大きな病気を発症するリスクも高まってしまうといえます。上肢や下肢の機能改善を目指すとともに、脳卒中の再発の予防に努めるためにも覚えておきたいツボです。


 


◆2:足三里(あしさんり)


効用:自己免疫力を高める、背屈運動を促す


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「足三里」は自己免疫力の向上に効く代表的なツボの一つであるとともに、足首の背屈運動を促すために効果的なツボです。


脳卒中の後遺症として足首を甲側に背屈できなくなる方が多くみられますが、その原因のひとつに「脛(すね)の筋肉である前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の伸縮力が落ちていること」 が挙げられます。「足三里」はこの前脛骨筋上にあるツボになります。


足首がしっかりと背屈できなければ、歩行中に足を真っすぐに出すことができず、外へと振り回す(分回し歩行)かたちになってしまい、体の軸が真ん中に保てなくなります。体の軸が健側に偏ることでも脳のイメージに誤差が生じて手や足を中心に筋の緊張が生じてしまいがちです。


筋緊張を抑えながら足首の背屈運動を促すために、足三里のツボへの刺激は効果的といえます。


 


◆3:合谷(ごうこく)


効用: 緊張を抑える、痙縮のためのケアに


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「合谷」のツボは全身の緊張を抑える働きがあります。無意識に力が入る痙縮(けいしゅく)でお困りの方によく使うツボです。手の握り込みが強くなると合谷の周囲が固くなります。合谷を刺激することで、手の血行改善や首肩こりの解消が期待できます。


触りやすい位置にあるツボですので、ホームケアでセルフ灸やセルフ指圧を行っていただくとより良いでしょう。


 


◆4:太衝(たいしょう)


効用:全身の緊張を抑える、痙縮のためのケアに


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「太衝」のツボには全身の緊張を抑える働きがあります。無意識に力が入る痙縮(けいしゅく)でお困りの方によく使うツボです。


また、「太衝」には体内の上に偏った熱を下げる働きがあります。イライラやのぼせ、顔の発赤、頭の回転が落ちる、ボーっとする、足の冷え・浮腫みなどの症状は『上熱下寒』(じょうねつげかん)という上に熱、下に冷えが偏っているときに起きる身体からのサインです。


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『上熱下寒』の状態では脳も正常に働きづらく、鍼灸やリハビリ中の運動刺激・感覚刺激も入りづらくなります。リハビリを行う前の準備として鍼灸治療をすることは効果的といえます。


 


◆5:中府(ちゅうふ)


効用:姿勢と呼吸を整える、筋肉へのアプローチ


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「中府」は姿勢と呼吸に関係するツボになります。脳卒中の後遺症で使いづらくなる筋肉は、お腹の中にある深い4つの筋肉(腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋群)であるインナーマッスルです。この筋肉の働きが落ちると呼吸量が浅くなり、背中は丸くなって頭が前に出る姿勢になります。反対に、呼吸量が落ちてインナーマッスルが働きづらくなることもあるので、鍼灸では内臓や筋肉のバランスに対するアプローチをしていきます。


腕を上に挙げる動作をするときには肩の外側にある三角筋が働くことで真っすぐに挙上ができますが、脳卒中の後遺症ではこの三角筋が使いづらくなるため、胸(大胸筋・小胸筋)と肩上部で頑張ろうとします。


頑張ることを継続すると肩が内側に内旋し、円背(背中が丸まり、猫背のような状態)の要素をつくり、二次的にも筋肉が硬くなってしまいます。胸部や肩上部の緊張や硬さを取るアプローチのために、中府は効果の高いツボの一つになります。


 


◆6:八風(はちふう)


●効用: 足の血流改善


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「八風」は足の血流改善に効くツボです。


足の裏の感覚が鈍ければ上手に重心を支えることができません。足底の不安定感から麻痺側全体に筋緊張が入ってしまいます。感覚が分かりにくいということは、脳の中でのイメージでも正しい足の幅や長さが確認できなくなります。この感覚の誤差は、足のあらゆる関節が動かしづらくなることや、痛みやしびれが発生する一因になるのです。


正常な感覚へと戻すためには、血流を促進させ、足にある感覚のセンサーを再び働きやすくしなければなりません。


「八風」は指圧でも効きやすいツボですので、足の冷えやむくみ、しびれ、感覚麻痺にお悩みの方はご家庭でのセルフケアをおすすめします。


 


◆7:足裏三点


●効用:足裏の感覚障害の改善に


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◆7の「八風」で説明したとおり、足裏の幅や長さのイメージ改善や感覚障害改善のための足の裏へのケアとして、「お灸での温熱刺激」が有効です。


脳梗塞リハビリセンターの鍼灸施術で足裏への感覚刺激を入れるとともに、ご自宅でも足裏へのセルフ灸をしていただくと、さらに足底や足指の感覚麻痺の改善スピードが早くなることが期待できます。 足の裏や指の感覚に左右差がありお悩みの方はぜひ一度お試しください。


 


 


■解説者プロフィール :


脳梗塞リハビリセンター 大宮 鍼灸師


森田遼介


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学歴:2012年 呉竹医療専門学校本科卒業


国家資格:2012年 はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師 免許取得


職歴:
2012年 はりきゅう小田原治療室、金子マッサージ 入社
鍼灸流派の一つである「経絡治療」で全国的に有名な先生のもと、昼間は勉強をさせていただきながら夜間は箱根の旅館を回りマッサージで生計を立てる。


2014年 株式会社メディカルハンド 入社
業界会社セリアジョブ代表取締役から "東京でマッサージNo.1" という紹介で入社。鍼灸・マッサージ共に指名No.1を3年間維持する。


2017年 ~現在 株式会社ワイズ入社後、脳梗塞リハビリセンター大宮に勤務
研修指導や東京パラリンピック出場を目指す反町公紀選手のボディケア担当をはじめ、多くのご利用者さまに鍼灸+リハビリの組み合わせで変化を感じていただけるよう邁進中。


 


監修協力:


■脳梗塞リハビリセンター 教育担当 鍼灸師 


石上邦男


学歴:
1994年 早稲田大学教育学部英語英文科卒業 
2009年 花田学園日本鍼灸理療専門学校卒業


国家資格:
2009年 はり師・きゅう師 免許取得


職歴:
2009年 横浜市青葉区にはりきゅう治療院sootheを開設


来院とデイサービスなどへの出張を併行して、脳卒中後遺症と様々な随伴症状の改善に従事。


2015年 脳梗塞リハビリセンター(株式会社ワイズ)入社


脳梗塞リハビリセンター研修センターにて鍼灸技術研修を担当。
利用者さまの快復に少しでも益する鍼灸師の育成とはり・きゅうの普及に格闘中。


脳梗塞リハビリセンター 鍼灸部門統括 鍼灸師 


宮澤勇希


学歴:
2016年 日本工学院八王子専門学校 医療カレッジ鍼灸科 卒業


国家資格:
2016年 はり師・きゅう師 免許取得


職歴:
2016年〜2019年 楊中医鍼灸院 就職


中医学を用いて皮膚疾患、婦人科疾患、精神疾患など幅広い疾患の治療を専門して体質改善を目指し治療、臨床経験を積む。研修生への研修講師を務める。
心理カウンセラー資格 取得


2019年〜現在  株式会社ワイズ入社後、脳梗塞リハビリセンター立川店勤


2021年 鍼灸部門統括 就任




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