【リハセンナレッジ】生活期で使用されることの多い下肢装具のタイプ、その特徴
脳卒中後遺症により身体に麻痺などの機能障害が残った方が生活期(維持期)で使用する下肢装具のうち、代表的な5つの短下肢装具のタイプと特徴 を解説します。日常生活をサポートする大切な下肢装具について理解を深め、安心・安全に装具を使用していきましょう。
※「AFO」(ankle-foot orthosis / エーエフオー)は「短下肢装具」の略称です。
① シューホーン
●タイプ別分類:プラスチックAFO
●素材と構造:ポリプロエチレンやオルソレンなどの樹脂材料を用い足関節の安定性の向上を目的とした短下肢装具。石膏ギプスを用いて足の型取りを行い、プラスチックで成型して製作します。
●特徴:
・足関節の安定性とコンパクト性のバランスの良いプラスチックAFOです。足関節後部のプラスチック部分をトリミング加工することで矯正力の調整が可能です。
・足にぴったりと合うオーダーメイドの装具に仕上がるため、コンパクト性が高く、シューホーンを装着したまま靴(一部の革製のビジネスシューズやスニーカー等)を履くこともできます。
●主な適応症例:
・腓骨神経麻痺等による下垂足
・脳卒中後片麻痺による中程度の痙性(重度の痙性、足部変形、足関節拘縮を除く)
・軽度の内反尖足
●基本機能特性:コンパクト性 〇 / 支持性 △
●耐用年数:1.5年
② タマラック
●タイプ別分類:プラスチック AFO / 継手付き
●素材と構造:
・歩行能力の向上を目的に、下腿部を支えるプラスチックと足部を支えるプラスチックをウレタン製の継手でつないだ継手付き短下肢装具。つま先を持ち上げるように働く継手や、足関節の角度を制限する機能を持った継手など、さまざまな継手が選択できます。
継手の内部には伸長が少ないタイプのワイヤーが入っており、継手部の強度と耐久性に優れた下肢装具です。石膏ギプスを用いて足の型取りを行い、プラスチックで成型して製作します。
●特徴:
・トイレ動作、立ち座り、段差昇降など生活様式に合わせた動き(足関節背屈、股関節伸展)をサポートするAFOです。
・背屈(つま先を持ち上げる)方向の可動域を阻害しないため、足関節に自由度のあるAFOです。下腿部後方にプラスチックによるストッパーを作成することで底屈制限が可能です。(背屈補助ができるタイプもあります)。
●主な適応症例:
・腓骨神経麻痺等による下垂足
・脳卒中後片麻痺による軽度の痙性(重度の痙性、足部変形、足関節拘縮を除く)
●基本機能特性:コンパクト性 △ / 背屈フリー ○ / 底屈制限 ○ / 支持性 △
●耐用年数:1.5年
③ オルトップAFO
●タイプ別分類:プラスチック AFO
●素材と構造:
シューホーン等のプラスチックAFOの製作技術のノウハウを生かし作られた、軽量かつ厚みが薄くコンパクトながらも背屈方向への矯正力を確保した短下肢装具。
●特徴:
・足を持ち上げている時につま先が下がらないようにサポートします。
・リング付きストラップにより足首に適度なホールド感があり、足首の安定性が得られます。
・コンパクト性が高く、装具を着用したままさまざまな靴(ビジネス用の革靴、スニーカーなど)を履くことが出来ます。
・「規格品」(既製品。サイズの選択が可能)と、足の型取りを行いオーダーメイドで製作するタイプが選択できます。
●適応症例:
・腓骨神経麻痺等による下垂足
・ごく軽度の内反・尖足
■オルトップ AFOのバリエーション:
オルトップAFOよりも高い支持性を求める方のために、次の2つのバリエーションが用意されています。
◆ オルトップ AFO-LH :
・「オルトップ AFO」の良さを引き継ぎながら下腿部の高さを高く、足底を長くすることで矯正力を高めたタイプ。
・適応症例: 腓骨神経麻痺等による下垂足、脳卒中後片麻痺による軽度の痙性(重度の痙性、足部変形、足関節拘縮を除く)
◆ オルトップ AFO-LH プラス:
・「オルトップ AFO-LH」よりも、さらに下腿部の高さが高く、足長はつま先までの長さがあり、シューホーンと同等の機能を持つタイプ。
・適応症例: 腓骨神経麻痺等による下垂足、脳卒中後片麻痺による中等度の痙性(重度の痙性、足部変形、足関節拘縮を除く)
●いずれのオルトップ AFOも「規格品」と、足の型取りを行いオーダーメイドで製作するタイプが選択できます。
●基本機能特性(オルトップ 全3タイプ共通):コンパクト性 ◎ / 支持性 △
●耐用年数:1.5年
④ 金属支柱AFO (両側支柱AFO 靴型装具タイプ)
●タイプ別分類:金属製 AFO (ベルト・ストラップ・靴は天然皮革または合成皮革を使用)
●素材と構造:
より大きな矯正力を必要とする場合に使用する短下肢装具。靴の中に金属のプレートを埋め込み、そのプレートと下腿部分をつなぐように金属の支柱が取り付けられています。金属製のため、強い力が加わっても装具の変形(たわみ)が起こりにくいメリットがあります。足関節矯正用のストラップを用いて足関節の内反・外反の矯正や踵の浮きを押さえることができます。
●特徴:
・プラスチック製に比べて重量が重くなりますが、強固な制御が可能です。
・用途に応じていろいろな足継手を選択できます。足部の変形が大きい場合や、足関節の内反・外反が強くプラスチック装具では矯正できない場合などに対応することができます。
・「靴型装具タイプ」(写真)は屋外用に適しています。屋内用として「足部覆いタイプ」(つま先の部分は開放された、サンダルタイプ)、足部をプラスチックで作製し上から靴を履けるようにするタイプも選択できます。
●適応症例:脳卒中後片麻痺(重度の痙性、足部変形、足関節拘縮にも適応)
●基本機能特性:コンパクト性 × / 支持性 ◎
●耐用年数:3年
⑤ ゲイトソリューションデザイン
●タイプ別分類:金属製(チタンフレーム)AFO / 油圧式継手付き
●素材と構造:
片麻痺者の歩行分析の結果に基づいて開発された油圧式継手付きの短下肢装具(規格品)。踵接地直後に必要な筋活動を補助するために一瞬で大きな力を発生させられる油圧ダンパーを力源として採用。この油圧式の底屈制動機構により「歩きやすさ」を実現した装具です。
フレームの金属はチタンを採用し、軽さと丈夫さを両立。体に触れる部分には通気性に優れた水分分散パッドを使用し、快適性を向上させています。
●特徴:
・コンパクト性と高いデザイン性を兼ね備えた短下肢装具。装具の上からスニーカーやビジネスシューズなどを履くことができます。
・ゲイトソリューションデザインを使用することにより以下の効用が期待できます。
① 踵接地時の足関節の底屈の動きを油圧により制動することで、安心して麻痺のある足に荷重していくことができ、よりなめらかな体重移動を可能にします。
② なめらかな体重移動により自然な歩容を得ると同時に左右の対称性、バランスのとれた歩容を実現することができます。バランスのとれた歩容を実現することにより、きれいに歩ける、疲れにくい、歩行速度の増加などの効果を得ることができます。
③ 足を振り出す際には戻りバネがつま先を持ち上げる方向に補助をし、理想的な踵接地を実現します。
・内反・外反を制御する効果は低めです。
●適応症例:
・片麻痺、腓骨神経麻痺等
・足関節底屈および内反筋群の痙性が軽度から中等度
・著しい足部の変形や拘縮がない
・立脚相の著しい膝折れや反張膝がない
・制限体重: 70 kg / 装具足部の足長 23㎝ ~ 26㎝
(制限体重90kgまでの「ゲイトソリューションデザインR1」もあります)
●基本機能特性: 底屈制動(調整可能) ◎ / 背屈フリー ◎ / 背屈補助 〇 / 支持性 △
●耐用年数:3年
<制作協力>
■下肢装具画像提供:KAWAMURAグループ
■参考資料:
川村義肢株式会社 「下肢装具」(カタログ/医療関係者向け)、同 「安心・安全に装具をお使いいただくために」(パンフレット)
パシフィックサプライ株式会社 「ゲイトソリューションシリーズ製品案内」(取扱説明書)
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