脳卒中(脳梗塞/脳出血)後の手の麻痺:専門家が教える効果的なリハビリテーション方法

「片麻痺は治らないの?」


「手のリハビリは難しいと言われた」


「諦めずに手が動かせるようにリハビリをしたい」


今回の記事は、脳卒中リハビリによくあるそんな悩みをもった方のために作成しました。


 




片麻痺とは


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片麻痺の定義


片麻痺とは、主に脳の運動をコントロールの役割を果たす神経が損傷することにより、身体の片側(右半身または左半身)の機能が低下し、運動が困難になる状態を指します。


この状態は、脳の損傷によって引き起こされることが多く、特に脳卒中(脳梗塞や脳出血)が原因となります。


また、脳卒中は、運動機能だけでなく、感覚機能や高次脳機能にも影響を及ぼすことがあります。


 


片麻痺の原因


片麻痺の主な原因は脳卒中です。


脳卒中は、脳内の血管が詰まったり、血管が破れることによって発生します。


その他の原因としては、外傷性の脳損傷、脳腫瘍なども挙げられます。


脳の特定の領域が損傷を受けると、その領域に対応する身体の部位に麻痺が現れます。


 


片麻痺の症状


片麻痺の症状は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下が含まれます。


運動機能の低下


身体の片側の運動や感覚が障害されて、運動が病前のようにはうまくいかなくなる。


感覚の異常


触覚、痛覚、温度感覚などが鈍くなる。


バランスの喪失


座っていたり、立ったり、歩いたりするのが難しくなる。


協調運動障害


細かい動作や素早い動作が難しくなる。


筋緊張の変化


筋肉の緊張が異常に高まったり、逆に、緊張が低下したりすることがある。


 




手の片麻痺の特徴


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麻痺の程度による分類


片麻痺の程度は、軽度から重度までさまざまです。


軽度の場合、手の細かい動作がやや困難になる程度の場合もあります。


中等度の場合、ある程度は動かせるものの動きのパターンが極端に少なくなったりします。


重度の場合、手全体がほとんど動かせなくなることもあります。


麻痺の程度も人それぞれで、動きのパターンや癖もそれぞれ異なるので、リハビリの内容は、発症からの時期や麻痺の程度、一人一人の動きの特徴にあわせて調整されます。


 


手指の変形


片麻痺によって手指に変形が生じることがあります。


脳卒中の発症後で手の感覚がわからなくなると、手に力が入ったままになることがありますが、その状態が長期間続くと筋肉や腱が固まり関節が固定されてしまうこともあります。


こうなると、手の機能がさらに低下し、日常生活動作が困難になります。


 


感覚障害


手の片麻痺では、感覚障害もよく見られます。


具体的には、触覚、痛覚、温度感覚が鈍くなることがあり、これが原因で手を使う動作を難します。


感覚障害は、手のリハビリを進める上での大きな障害となることも多いです。


 




片麻痺の手のリハビリテーション


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急性期のリハビリ


ポジショニング


急性期のリハビリテーションでは、適切なポジショニングが非常に重要です。


適切な姿勢を保つことで、拘縮(筋肉や腱が固くなり関節が固まること)や褥瘡(床ずれ)を予防します。


また、運動・感覚の麻痺があると、ベッドに寝ていても安定しない感じがしていることもあり、適切なポジショニングによって安心して療養できるようにすることも大切です。


 


関節可動域訓練


関節可動域訓練は、関節が固まらないようにするための訓練です。


理学療法士が患者の手や指を優しく動かし、関節の可動域を維持します。


この訓練は、筋肉や腱の短縮を防ぎ、後のリハビリがスムーズに進む為にも大切です。


 


早期離床


早期離床は、患者ができるだけ早くベッドから離れて活動することを促すことです。


これにより、できるだけ筋力の低下を防ぎ、血栓や肺炎などの合併症を予防します。


手のリハビリと並行して行うことで、全体的な機能回復を目指します。


 


回復期のリハビリ


促通反復療法


促通反復療法は、繰り返し同じ動作を行うことで、神経回路の再構築を促す方法です。


麻痺した手を意識的に使用することで、運動機能の回復を図ります。


繰り返しの訓練が重要であり、専門家の指導の下で継続的に行うことが推奨されます。


 


課題指向型訓練


課題指向型訓練は、日常生活の中で実際に行う動作を模した訓練を行います。


例えば、物をつかむ、ボタンを留める、ペンを持つなどの動作を繰り返し訓練します。


実生活での動作を取り入れることで、手の機能の回復も実感しやすくなります。


 


機能的電気刺激療法(FES)


機能的電気刺激療法(FES)は、電気刺激を用いて麻痺した筋肉を収縮させながらリハビリを進める方法です。


これにより、筋力の強化とともに、神経と筋肉の再教育を図ります。


FESは、特に手の機能回復に効果があり、リハビリテーションの手段の一つです。


 


ミラーセラピー


ミラーセラピーは、健常な手の動きを鏡を使って視覚的に麻痺した手に見せる方法です。


これにより、脳が麻痺した手の動きを再認識し、機能回復を促進していきます。


簡単に実施できるため、家庭でも行いやすいリハビリ方法です。


 


生活期のリハビリ


自主トレーニング


生活期には、自主トレーニングが重要です。


リハビリ専門家からの指導を受けた後、自宅で継続して訓練を行うことで、機能回復を図ります。


毎日のルーチンに取り入れることで、日常生活の中で手の機能を改善していきます。


手の機能が改善する方は、リハビリの時間以外にも自主的に手を動かす機会を作っているかたが多いです。


 


日常生活動作(ADL)訓練


日常生活動作(ADL)訓練は、自立した生活を送るための訓練です。


具体的には、食事や入浴、着替えなどの日常動作を繰り返し練習します。


ADL訓練は、患者の自信を高め、生活の質を向上させます。


 




手の機能回復を促進する方法


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ストレッチング


ストレッチングは、筋肉の柔軟性を維持し、関節の可動域を広げるために重要です。


毎日定期的に行うことで、筋肉の硬直を防ぎ、手の動きをスムーズにします。


特に、手の筋肉や腱のストレッチングは、リハビリの基本となります。


注意点として、麻痺のある手は刺激に敏感になっている部分もあるので、反射(刺激を受けることで筋肉が縮む反応)が出ない範囲で、かつ、痛みが出ない範囲で行うことがおすすめです。


 


筋力トレーニング


筋力トレーニングは、手の筋力を強化するための訓練です。


軽いウェイトやエクササイズバンドを使用して、手の筋肉を鍛えます。


筋力が回復すると、手の動作が安定し、日常生活での動作が楽になります。


注意点として、筋力を発揮しようとすると、狙った筋肉以外の筋肉が代償的に働いてくることが少なくないので、正しい動かし方をリハビリのスタッフと確認して正しい動きを反復してトレーニングすることが改善の為には重要です。


 


巧緻動作訓練


巧緻動作訓練は、細かい動作を練習する訓練です。


例えば、ピンセットを使って小さい物をつまむ、ボタンを留める、ペンを使って文字を書くなどの訓練を行います。


手の器用さを高めることで、日常生活での動作がスムーズになります。


必要以上に力が入っていると、手が疲れてしまうという方も多く、うまくリラックスしながら行うことがポイントになることも多いです。


 




片麻痺の手に対する補助具・自助具


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装具・スプリント


ス装具やプリントは、手や指の補助・固定具で、関節の保護や拘縮を防ぐために使用します。


夜間やリハビリ中に装着し、手の姿位や形状を維持します。


適切な装具・スプリントを使用することで、リハビリの効果が向上します。


肩関節に亜脱臼の症状がある方なども、適切な上肢の装具を用いることで歩行の際に肩関節を安定させることができて歩行能力が向上する方もいます。


 


自助具の種類と使用方法


自助具は、片麻痺の手でも日常生活をより容易にするための道具です。


例えば、特別な形状の食器、着替え補助具、持ちやすいペンなどがあります。


自助具を適切に使用することで、自立した生活を支援します。


 




日常生活での注意点


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拘縮予防


拘縮は、筋肉や関節が固くなり、動きが制限される状態です。


拘縮を防ぐためには、定期的なストレッチや関節可動域訓練が必要です。


また、適切なポジショニングやスプリントの使用も効果的です。


 


過用症候群の予防


過用症候群は、麻痺していない側の手や身体を過度に使用することで生じる痛みや疲労です。


脳卒中の後遺症で片麻痺のある方は、少なからず麻痺のない側の半身も必要以上に緊張させていたり、痛みが出ている方も少なくないです。


麻痺側に限らず、麻痺のない側の半身もケアして、バランスの取れた動作を心がけましょう。


ご自身の体が必要異常に緊張していることは自分ではなかなか気がつけなかったりしますので、リハビリ専門家の指導を受けることもバランスの良い身体の使い方を学ぶ機会となります。


 


安全管理


片麻痺の患者は、転倒や事故のリスクが高いため、安全管理が重要です。


家の中の環境を整え、転倒防止マットや手すりの設置などを行います。


また、転倒した際にはその原因を探り、再発予防する為の専門家のアドバイスも重要です。


 




最新の治療法と研究


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ロボットリハビリテーション


ロボットリハビリテーションは、リハビリロボットを使用して手の動作を支援する方法です。


最新の技術を用いて、反復的な動作訓練を効率的に行うことができます。


ロボットリハビリは手の機能回復に有効であることを報告する研究もあります。



ロボットリハビリについてはこちらの動画もご覧ください 👇
https://youtu.be/YMI4H-QJmtk?si=e2m6X805ooA26Nym


 


経頭蓋磁気刺激療法(TMS)


経頭蓋磁気刺激療法(TMS)は、磁場を用いて脳の特定の部位を刺激する方法です。


脳の可塑性(脳が変化する力)を高め、麻痺した手の機能回復を促進します。


TMSは非侵襲的であり、副作用が少ないこともあり、注目されています。


TMSについてはこちらの動画もご覧ください👇
諦めないリハビリの専門医!貴宝院先生のr-TMS勉強会
https://bit.ly/3Vj5KaZ


 


再生医療の可能性


再生医療は、損傷した神経や組織を再生させることを目指す治療法です。


幹細胞療法など最新の技術が研究されており、片麻痺の治療の可能性が期待されています。


 




家族や介護者の役割


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介助方法


家族や介護者は、片麻痺の患者が日常生活を送る上で重要な役割を果たします。


正しい介助方法を学び、患者が自立できるようサポートすることが求められます。


例えば、移動や着替え、食事の介助など、具体的な方法を理解することが大切です。


介助者が負担のない形で介護を行えるようにすることも非常に重要なことなので、お困りの方は専門家に相談することでより良い介護方法を見つけ出すことができます。


 


精神的サポート


片麻痺の患者は、精神的なサポートも必要です。


家族や介護者が励ましや理解を示し、患者のモチベーションを維持することがリハビリの成功に繋がります。


また、定期的なコミュニケーションを通じて、患者の心のケアを行うことも重要です。


同じような病気や障害をもつ人との交流ができる患者会への参加も、様々な情報交換ができたり、本人・家族の心理的な支えとしても有効な方法です。


 




まとめ


後遺症を改善するための道


片麻痺は、脳梗塞をはじめとする脳卒中後に多くの患者さんが直面する課題です。


しかし、ここまでご紹介してきたように、適切なリハビリテーションと支援によって改善を図ることができます。


手の機能改善には、早期からの包括的なアプローチが重要です。


ストレッチングや筋力トレーニング、巧緻動作訓練といった基本的な方法から、最新のロボットリハビリテーションや経頭蓋磁気刺激(TMS)療法まで、様々な選択肢があります。


また、リハビリを進めていく上での注意点も把握しておくことで、より安全かつ効果的に改善を積み重ねることが可能となります。


しかし、このような後遺症の改善は決して容易ではありません。


専門家のサポートと、ご家族や介護者の方々の協力が不可欠です。そして何より、患者さん自身の前向きな姿勢と継続的な努力が、改善の鍵となります。


 


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