
【解説】脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の症状を早期発見(fast)からリハビリまで
脳卒中は突然発症し、生命を脅かす重大な疾患です。
早期発見と適切な治療が、その後の回復に大きな影響を与えます。
この記事では、脳卒中の種類や症状、診断方法から最新のリハビリテーション技術まで、まとめて解説します。
最終更新日:2024年8月30日
〇脳卒中とは
脳卒中は、脳の血管に異常が生じることで、脳の機能に障害が起こる病気の総称です。
主に以下の3つに分類されます。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
これらの病態は、突然発症し、迅速な対応が求められます。
〇脳梗塞とは
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで、その先の脳組織に十分な血液が行き渡らなくなり、酸素や栄養が不足して脳細胞が壊死する病気です。
脳梗塞には主に以下の3つのタイプがあります。
- ラクナ梗塞:脳の深部にある小さな血管が詰まることで生じる小さな脳梗塞
- アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化によって狭くなった脳の血管が詰まることで生じる脳梗塞
- 心原性脳塞栓症:心臓からの血栓が脳の血管を詰まらせることで生じる脳梗塞
〇脳出血とは
脳出血は、脳内の血管が破れて出血する状態です。
主な種類には以下があります。
- 被殻出血:脳の深部にある被殻で起こる出血で、しばしば運動機能に影響を与える
- 視床出血:視床という脳の深部構造で起こる出血で、感覚障害や意識障害を引き起こす
- 脳幹(橋)出血:脳幹の橋部分で起こる出血で、生命維持に関わる機能に重大な影響を与える
- 小脳出血:小脳で起こる出血で、平衡感覚や運動調整に影響を与えます
- 皮質下出血:脳の表層に近い部分で起こる出血で、局所的な神経機能の障害を引き起こす
出血の場所や血種の大きさによって、症状や予後が大きく異なります。
〇くも膜下出血とは
くも膜下出血は、脳動脈瘤が破裂するなどして、くも膜下腔に出血が起こる状態です。
突然の激しい頭痛が特徴的で、意識障害を伴うことも多く、緊急の処置が必要です。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の主な原因
脳卒中の主な原因には以下のようなものがあります。
1. 高血圧
- 血管への負担が増える
2. 動脈硬化
- 血管の弾力性が失われ、狭窄や閉塞のリスクが上昇
3. 血栓形成
- 血液の固まりが血管を塞ぐ
4. 心房細動
- 不整脈により血栓が形成されやすくなる
5. 糖尿病
- 血管の損傷や動脈硬化を促進
6. 喫煙・過度の飲酒
- 血管の健康に悪影響
7. 脳動脈瘤
- くも膜下出血の主な原因
8. 外傷
- 頭部への強い衝撃による血管損傷
9. 肥満
- 高血圧や糖尿病のリスクを高める
10. もやもや病
- 脳底部の血管が異常に狭窄する遺伝性疾患
これらの要因が複合的に作用することで、脳卒中のリスクが高まります。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の一般的な症状
脳卒中の症状は、損傷を受けた脳の部位によって異なりますが、主な症状には以下のようなものがあります。
1. 運動麻痺(体の片側の麻痺)
- 手足の動きが悪くなる、力が入らない
2. 言語障害(失語症・構音障害)
- 言葉が出てこない、滑らかに話せない
3. 視覚障害
- 視野が欠ける、物が二重に見える
4. 意識障害
- 意識がもうろうとする、昏睡状態になる
5. 高次脳機能障害
- 記憶力の低下、注意力の散漫、判断力の低下など
6. 認知障害
- 思考や記憶、判断などの能力が低下する
これらの症状が突然現れた場合、脳卒中の可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診することが重要です。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の前兆や初期症状
脳卒中の前兆や初期症状を見逃さないことが、早期発見・早期治療につながります。
主な症状には以下のようなものがあります。
1. 顔の片側の歪み(口角が下がる)
2. 手足の力が入らない(麻痺)
3. 手足がしびれる(感覚異常)
4. ろれつが回らない・言葉がしゃべりづらい(失語症・構音障害)
5. 目が見えにくい(視力低下やものが二重に見える)
6. 突然の激しい頭痛
7. 突然の吐き気や嘔吐
8. めまいや耳鳴り
9. 肩こりや手足の震え
これらの症状が現れた場合、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性もあり、脳卒中のリスクが高まっている可能性があります。
速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
〇FASTとは(早期発見のためのチェック方法)
FASTは、脳卒中の早期発見のために広く用いられているチェック方法です。
以下の4つの項目から成り立っています。
1. Face(顔)
- 顔の片側が垂れ下がる、笑顔がうまくできない
2. アーム(腕)
- 両腕を持ち上げると片方が下がる、片腕に力が入らない
3. Speech(言語)
- 言葉がうまく話せない、言葉が出てこない、言葉が理解できない
4. Time(時間)
- これらの症状が見られたらすぐに救急車を呼ぶ
FASTは簡単で覚えやすく、一般の方でも脳卒中の可能性を素早く判断できる有効な方法です。
これらの症状が見られたら、躊躇せずに救急車を呼ぶことが重要です。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血)の診断方法
脳卒中の診断には、以下のような検査が用いられます。
1. 医師の診察
- 意識レベルの確認、気道・呼吸・循環、瞳孔所見の評価など
2. CTスキャン
- 脳の状態を短時間で確認でき、特に出血の有無を判断するのに有効
2.MRI検査
- 脳の詳細な画像を得られ、小さな病変も検出可能
3. 血液検査
- 炎症マーカーや凝固系の異常などを確認
これらの検査結果を総合的に判断し、適切な治療方針を決定します。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血)の急性期治療
脳卒中の急性期治療は、発症後できるだけ早く開始することが重要です。
主な治療方法には以下のようなものがあります。
1. 薬物療法
- rt-PA静注療法:血栓を溶かす薬を投与(発症から4.5時間以内)
- 血圧管理:適切な血圧を維持する薬物治療
- 脳保護薬:脳細胞の障害を軽減する薬物投与
2. 手術療法
- 血栓回収療法:カテーテルを用いて血栓を物理的に除去
- 血種除去術:脳内出血の場合、血腫を外科的に除去
3. 血管内治療
- 血栓溶解剤の動脈内投与
- ステント留置術
4. 抗血小板薬、抗凝固薬の使用
- 血栓の再発を予防
5. 抗浮腫薬の使用
- 脳浮腫を軽減し、二次的な脳損傷を防ぐ
これらの治療は、患者さんの状態や発症からの時間、脳卒中のタイプなどを考慮して、最適な方法が選択されます。
〇リハビリテーション
脳卒中後のリハビリテーションは、患者さんの機能回復と生活の質の向上に極めて重要です。
主なリハビリテーションの種類には以下があります。
1. 理学療法
- 歩行訓練
- バランス訓練
- 筋力強化訓練
- 関節可動域訓練
2. 作業療法
- 日常生活動作(ADL)訓練
- 上肢機能訓練
- 認知機能訓練
3. 言語療法
- 発声・構音訓練
- 言語理解・表出訓練
- 嚥下機能訓練
4. 生活指導
- 自宅での生活環境調整
- 介護者への指導
5. 公的保険外(自費)リハビリ
- 集中的なリハビリテーション
- 最新のリハビリ技術の利用
6. 最新のリハビリ機器
- ロボットスーツHAL:身体機能の回復を促進
- 経頭蓋磁気刺激(TMS):脳の可塑性を高める
- バーチャルリアリティ(VR)を用いたリハビリ:モチベーション向上と効果的な訓練
リハビリテーションは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて個別にプログラムを組み、段階的に進めていくことが重要です。
〇脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防
脳卒中の予防には、生活習慣の改善が非常に重要です。
以下のような取り組みが効果的です。
1. 生活習慣の改善
- 規則正しい生活リズムの確立
- ストレス管理
2. 食事管理
- 減塩:1日の塩分摂取量を6g未満に
- バランスの取れた栄養摂取:野菜、果物、魚を積極的に摂取
- 適正体重の維持
3. 適度な運動
- 有酸素運動:ウォーキング、水泳など
- 筋力トレーニング:週2-3回程度
4. 禁煙
- 喫煙は脳卒中リスクを約1.5-2倍に増加させてしまう
5. 定期検診の重要性
- 年1回以上の健康診断受診
- 高血圧、糖尿病、高脂血症などの早期発見と管理
これらの予防策を日常生活に取り入れることで、脳卒中のリスクを減らすことができます。
〇再発防止
脳卒中を一度経験した方は、再発のリスクが高まります。
以下のような再発防止策が重要です。
1. 再発リスクの管理
- 定期的な医療機関の受診
- 処方薬の確実な服用
2. 高血圧の管理
- 血圧の定期的な測定
- 目標血圧値の維持(一般的に130/80mmHg未満)
3. 抗血小板療法
- 抗血小板薬の服用
4. コレステロール管理
- 薬剤の服用
- 食事療法の継続
5. 血糖値のコントロール
- 糖尿病患者の場合、適切な血糖管理
- HbA1cの目標値維持(一般的に7.0%未満)
再発防止には、医療機関との密接な連携と、患者さん自身の自己管理が不可欠です。
〇若者における脳卒中の現状
近年、若年層の脳卒中が増加傾向にあり、社会的な問題となっています。
1. 若年性脳卒中の増加
- 20代、30代での発症例が増加
- 世界的な増加傾向が報告されている
2. 日本における統計データ
- 40歳未満の脳卒中患者は年間約2万人(推計)
- 若年層の脳卒中は全体の約7%を占める
3. 若者の脳卒中の主な原因
- 高血圧:若年層でも血圧の管理不足は多い
- 心房細動:若年層でも増加傾向
- 遺伝的要因:家族歴のある方はリスクが高い
- 不健康な生活習慣:不規則な生活、喫煙、過度の飲酒
- ストレスと過労:長時間労働や精神的ストレス
若年層でも油断せず、健康管理に気を配ることが重要です。
〇家族や介護者の役割
脳卒中患者さんのケアにおいて、家族や介護者の役割は非常に重要です。
1. 緊急時の対応
- FASTなどを用いた初期症状の見逃し防止
- 速やかな救急車の要請
- 発症時刻の記録(治療方針の決定に重要)
2. 日常生活の支援
- 服薬管理のサポート
- 食事療法の実践支援
- 自宅環境の調整(転倒防止など)
3. リハビリのサポート
- 自宅でのリハビリ継続の援助
- モチベーション維持のための精神的サポート
- リハビリ専門家との連携
4. 心理的サポート
- 患者さんの不安や悩みに寄り添う
- 必要に応じて心理カウンセリングの利用を検討
家族や介護者自身の健康管理も忘れずに行い、必要に応じてレスパイトケア(一時的な介護の休息)を利用することも大切です。
〇後遺症の管理とケア
脳卒中後の後遺症は患者さんによって様々ですが、適切な管理とケアが重要です。
1. 脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)退院後の生活指導
- 自宅での生活動作の確認と指導
- 再発予防のための生活習慣指導
- 定期的な通院スケジュールの確認
2. 後遺症の管理とケア
- 麻痺:発症後の身体運用を学ぶための継続的なリハビリテーション
- 言語障害:言語療法の継続
- 嚥下障害:誤嚥性肺炎予防のための食事指導
- 高次脳機能障害:認知リハビリテーション
- うつ症状:必要に応じて精神科との連携
3. 脳梗塞リハビリセンターの紹介
- 専門的なリハビリテーションプログラムの提供
- 最新のリハビリ機器の利用
- 多職種連携によるトータルケア
後遺症の程度や種類に応じて、個別化されたケアプランを作成し、定期的に見直すことが重要です。
まとめ
脳卒中は突然起こり、重篤な後遺症を残す可能性のある疾患です。
しかし、早期発見・早期治療、そして適切なリハビリテーションによって、多くの患者さんが機能を回復し、質の高い生活を送ることができます。
予防と早期発見の重要性を理解し、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
また、もし脳卒中を疑う症状が現れた場合は、迷わず医療機関を受診してください。
脳卒中後のリハビリテーションは非常に個人差も大きく、長期にわたることも多いですが、諦めずに継続することで、予想以上の改善が見られることもあります。
患者さんとそのご家族、そして医療チームが一丸となって取り組むことで、より良い結果を得ることができるでしょう。
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脳梗塞リハビリセンターでは、最新の知見と技術を駆使し、患者さん一人ひとりに最適なリハビリを提供しています。
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